「最近忙しくて寝てない」「今夜は徹夜だ」などと言っては、寝る時間を削って仕事に励む人たちを時々見かけます。寝る間もないほど忙しい状況であることには同情しますが、もしかしたら彼らは"忙しいから寝ていない"のではなく、"寝ていないから忙しい"のかもしれません。
「隊員にとって、休養することは頑張ることと同じ、いやそれ以上に必要な『仕事』なのだ。」
こう話すのは、陸上自衛隊本部でメンタルヘルスケアを担当していた下園壮太先生。
たとえば震災時、被災地に派遣される自衛隊員の任務は長期にわたることが多いそうです。この長期戦に耐え任務を遂行するには「疲労のコントロール」が必要不可欠で、隊員一人一人が長期にわたって全力で稼働できるよう、たとえ任務の途中であってもメンバー交代を行い、無理にでも休養させるのだと下園先生は言います。
その点で言うと、実は私たちの”祖先”も「休む大切さ」をちゃんと理解しているんです。
オランウータンやチンパンジーが休息・睡眠のために木の上にベッドを作っていることをご存知ですか?太い枝と細い枝をうまく組み合わせながら折り込んで作るんだそうで、中には丁寧に枕をこしらえるものもいるんだとか。
なんでも、オランウータンが絶滅せずに現代まで生き残ってこれたのはこのベッドが鍵を握っていると言われています。
日中は食物を求め森の中を歩き回るオランウータンですが、エサの少ない季節は体のエネルギー消費を抑えなければなりません。その結果、休息・睡眠を強化するようになったんだそうです。つまり、実りの季節にエサを求めて動き回れるようにするための準備期間を取っているということなんですね。
マイクロソフト日本法人の元・代表取締役社長の成毛眞さんも「睡眠のメカニズムを理解すべきだ」としてやはり睡眠を大切に考えています。
ノンフィクションの書評サイトを開設し、毎日大量の本を読みながらも原稿執筆に取り組む成毛さんは「眠りは情報を脳に定着させる時間」と考え、レビューを執筆しなければならない時ほど睡眠をとるのだそうです。
“睡眠時間=ムダな時間”ではありません。明日のパフォーマンスを上げるための"準備時間"なんです。しっかり睡眠をとることで、多忙な毎日から解放されるかもしれませんよ。

自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術 (朝日新書)
- 作者: 下園壮太
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2013/04/01
- メディア: Kindle版