多くのオフィスビルや商業施設では、環境対策を目的として暖房/冷房や換気などの自動調節システムが取り入れられています。このような、テクノロジーを使った不動産管理の市場規模は今後さらに拡大していくと言われています。
なぜなら今後、空調や照明の自動調節に加えてセキュリティ面でも積極的なテクノロジー化が進められていくことになるからです。スウェーデンの市場調査会社・Memoori社は、2020年までに不動産管理システムの市場規模は2兆円を超えるだろうと予測しています。
不動産テック関連企業を対象にコンサルティング活動を行っているMetaProp NYC社の共同設立者ザック・アーロン氏は次のように述べています。現在人の手によって行われている不動産管理業務は将来、100パーセント人工知能が行うことになるだろう、と。
例えば、アメリカ・シリコンバレーにある不動産管理会社のZenplace社は、人間とメッセージのやりとりを行うグーグル・ホームのようなチャットボットの開発のほか、人工知能を使った不動産管理システムを構築しています。
この不動産管理システムでは、不動産管理における各設備(例えば給湯装置やボイラーなど)が過去にどれくらいのスパンで修理を受けていたか、また、どのような状態の時に故障が起こりやすかったかといったことを人工知能に学習させることができるのです。これにより今まで人間が行っていたビルの設備点検は、各設備の使用頻度・期間に基づいて故障や不具合等の問題が発生するかどうかを、24時間人工知能が監視して判断してくれるようになるのです。
もちろん、何らかの不具合が発生しそうな場合には管理者にも報告してくれるため、点検忘れ等の人的ミスを回避することができるほか、不具合や故障を未然に防ぐことでビル全体の安全性が向上します。このように不動産の設備管理が自動化されることで労働時間や人件費の削減も期待できるでしょう。
オフィスビルや商業施設にテクノロジーを取り入れていくことは、そこで働く人たちの生産性を上げることにもつながっていく。そう考えれば、“不具合や故障を予測できるビル”を提供することは不動産会社の責任であると言えるのではないでしょうか。