新入社員やベテラン社員に限らず、仕事で怒りや不満を感じたことがある人は多くいるかと思います。できれば毎日平常心で過ごしたいというのが正直な気持ちではないでしょうか。
しかし、アムステルダム大学の研究では、人は怒りや不満を感じている時は平常心でいる時よりも「形にとらわれない思考」が生まれやすいことが明らかにされているんです。
研究チームが行った実験によれば、被験者の怒りの感情を刺激した上で、環境問題の改善方法についてアイデアを出させたところ、怒りや不満を感じていた被験者の方からより多くのアイデアが生まれたと言います。
しかも、そのアイデアは、被験者全体の1パーセントの人しか思いつかないような独創的なものだったそうですから、驚きですよね。
林要さんという男性をご存知でしょうか。今やソフトバンクの顔にもなっている人型ロボット「Pepper」の開発リーダーとして活躍した人物です。
林さんは、Pepperをどんなロボットにすれば人々に受け入れられるかを模索するため、とにかくたくさんのロボットと触れ合うことに力を注いだと言います。そして、彼自身で「このロボットは可愛くない」「このロボットは技術はすごいけど惹かれない」などの“不満”を経験していきました。
そんな彼ですから、不満はアイデアの源であるため不満を感じることそのものを否定するべきではないと主張しています。
「自分の不満や違和感を糸口に、みんなの不満や違和感を察知し、それを解消するアイデアが見つかれば、きっと多くの人に喜ばれるに違いないと思うのです。」―林要氏
アメリカの経営学誌「ハーバード・ビジネス・レビュー」でも、お互いに不満を持っている集団の方がより生産性が高いということが掲載されています。
これは、お互いに不満をぶつけ合うことで自分の不足している能力が明確になり、今後どこに注力すればいいかが明らかになるためなんだそう。スティーブ・ジョブズも度々社内で不満をぶちまけていたことはよく知られていますが、結果的には従業員の創造性や生産性を高め、時代を揺るがすような製品の誕生に繋がっていたんですね。
お笑い芸人でありながら今では芥川賞作家でもある又吉直樹さんも、著書「火花」に対する世間からの反応について「否定的な意見も含めて恵まれていると感じていた」と答えています。
もちろん相手を傷つけるような言葉や表現は避けるべきです。でも、仲間や社会への不満を溜め込む必要なんてないんです。だって、不満はイノベーションの源なんですから。