内閣府が発表しているデータによれば、日本には、身体障害者が約393万人、知的障害者約74万人、そして精神障害者320万人おり、単純に計算して日本の総人口の約6.6パーセントが普通の人と比べて何らかの障害を抱えて生活していることになります。
また、WHOが2004年に発表したデータによれば、世界65億人の人口のうち、約1億人近くが何らかの障害を持っており、障害者の方が一般社会に合わせて生活するのは大変なことはもちろんのこと、障害者の方は障害のない人達に比べて特別な能力を持っているということに多くの人が気づいていません。
例えば、人が得る情報の8割から9割は視覚に由来し、これはある意味目に依存し過ぎているとも言えます。
視力を完全に失いながらも、弁護士になった大胡田誠さんは人は表情は上手く隠すことができても、声や息遣い、抑揚、そして間のとり方には、初対面の人の前でも、正直なところが出てしまうとして、次のように述べています。
「僕には相手の表情から気持ちや考えを察することができない。けれども、見えないからこそ、かえって本心がよく見えることがある。『目は口ほどにものを言う』といわれる。でも、僕は『口は目ほどにものを言う』と感じることが多い。」
東京工業大学リベラルアーツセンター准教授の伊藤亜紗さんは著書「目の見えない人は世界をどう見ているのか」の中で、耳で「見たり」、目で「聞いたり」、鼻で「食べたり」、口で「嗅いだり」と何をするのにどの器官を使っているかが大切なのではなく、むしろ、「それをどのように使っている」かが大切で、足は従来、歩くために使われるものですが、目の視覚が遮断されると、体の別の部分の機能が発達し、足の裏から目や耳のように多くの情報を得ることができるようになると言います。
ヴァージン・グループの創設者であるリチャード・ブランソンやスティーヴン・スピルバーグが読み書きのスキルが一般の人よりも乏しい学習障害であることは有名であり、もしかすると、障害を持つアウトサイダーであるからこそ、それを補うために別の能力が身に付き、革新的なアイデアを生み出していけるのでしょう。
そう考えると、私たちが障害者を支えていくというよりは、障害を持たない一般の人達が、特別な能力を持つ障害者の方にある意味支えられているのかもしれません。