みなさんは仕事中、上司・同僚・部下に関係なく自分の意見を伝えることができているでしょうか。
言いたいことがあっても、「その場の雰囲気に負けて黙り込んでしまった」など、つい周囲を気にして自分の主張を抑えてしまう人も多くいることでしょう。もしかしたら、その“余計な遠慮”がコミュニケーションを滞らせているのかもしれません。
人気お笑い芸人の千原せいじさんは、「どんな人でも友達になってしまう」ほどコミュニケーション能力に長けていて、その能力の高さは業界内では有名なんだそうです。番組の収録で訪れたアフリカでも、お構いなしに現地住人に関西弁で話しかけ打ち解けたのだとか。
そんな彼は、自分自身を「がさつな人間」と分析。どんな相手でも相手の気持ちにズカズカ踏み込んでいくことを心掛けているそうです。
「結局、どんなにお互いの立場が違っても人間と人間の付き合いなんだから、腹を割って自然体で接することが肝心なんだと思います。」(千原せいじさん)
心理学者の河合隼雄さんは文化庁長官を務めていたこともあり、政府を代表してスピーチを行わなければならない機会があったそうです。日本の劇団が集まった会合でも祝辞の挨拶を行ったそうですが、この時の挨拶は公の式典には相応しくなく、それでいて、とても素晴らしいものだったと言います。
なんでも、「本日、この良き日に・・・」と文化庁が準備してくれた型通りの文章を読み始めると、河合さんは突然メモをテーブルに置き、「僕は本当に演劇が大好きなんですよ」と話し始めたというのです。当然、格式ばった式典の祝辞で自身の感想を述べたというような前例はありません。しかし、出席者は皆、河合さんの本心を感じることができたと言い、式典に相応しくないはずのスピーチは拍手喝采で終わったんだそうです。
津田塾大学国際関係学科の萱野稔人准教授は、日本人が異常なまでに「場の空気」にこだわるのは、空気を読むことが他人からの承認を得る手段の一つになっているからだと指摘します。日本人が本音を言わず堂々と自己主張することができないのも、このためだとしています。
でも、千原せいじさんや河合隼雄さんの例を見ると、もしかしたら場の雰囲気や空気なんて気にせず、もっと本当の自分を出してもいいのかもしれませんね。せめて会社では、“無難なコミュニケーション”を止めてみませんか?