犬の糞も持ち帰るのが当たり前の今、衝撃的な「のぐそ」写真を“袋とじ”で掲載したのは「 くう・ねる・のぐそ 自然に『愛』のお返しを」の著者、自然保護活動家の伊沢正名氏です。
こんな袋とじの使い方があるのかというところにも驚きますが、おっかなびっくり開いてみると、そこにはなぜか美を感じる景観があり、各地で公演をしてきた伊沢氏も、東京で行った「オーガニックガーデンマイスター講座」の受講生から次のような感想を寄せられたと載せていました。
「興奮さめやらぬまま家に帰り、夫に『自分のウンコで土壌の研究している人がいたよ!写真に撮って見せてくれたんだよ!これがまた変な話、すごくキレイなんだよ!!……』寝るときまで話し続け、とうとう『帰ってからウンコの話ばっかり、いい加減にしてくれ!』と言われてしまいました」
美容やお金と時間の節約といった理由で1日1食しか食べない「不食」がブームとなっているほど、食を自分としか繋げて考えられない人が増えているようですが、人工肥料のなかった江戸時代では、野菜などの作物の出来は糞尿を確保できるかどうかにかかっていたため、いいものを食べている大名屋敷の糞尿には高い値がついていたと言います。
ランクの低い長屋の糞尿でも大家には今でいうと月数万円の資金源で、糞尿を「もったいないから」と下水道に流さないでいたことは、江戸が外国人を感嘆させるほどの「クリーン都市」になれた大きな要因でもあるのです。
森で自分のウンコが分解される様子を調べてきた伊沢氏は、ウンコが数々の分解ステージを経て2~3ヵ月後には根っこから吸収される養分となって森を助けているとわかったとき、その感動を次のように述べていました。
「多くの動植物や菌類が私のウンコに群がり、たいへんな饗宴を繰り広げている現場を目撃した。ウンコは分解してもらうお荷物などではなく、とんでもないご馳走だった。ウンコをきちんと土に還しさえすれば、もうそれだけで生きている責任を果たせそうな気がしてきた。」
大金を投じて処理場を建設し、「できるだけ遠くで始末してほしい」と考える現代人もきっと、「汚い」という刷り込みを解いて本当のウンコについて知ったとき、自分たちはなんという悪循環を作り出してしまったのだろうという後ろめたさを覚えることになるでしょう。