よく日本の景気の話をする時、製造業の業績回復が一番に注目されますが、実際、日本のGDPと雇用の7割を占めるのは、製造業ではなくサービス業であり、その大半が世界のグローバル市場ではなく、地域の小さな市場で勝負しているローカル企業だということはあまり知られていません。
経営コンサルタントである冨山 和彦さんは、ローカルな経済市場では、顧客との密着度合いが経済の効率や安定を決めるため、長期的に見れば、ローカル市場に目を向けた方が儲かり、ほんの数パーセントの勝率しかないオリンピックでメダルを狙うよりも、県大会で確実に優勝を狙うべきだと述べています。
しかしながら、日本の地方都市の現状を見てみると、駅周辺の商店数は1997年〜2014年の17年間で半減、年間販売額も3分の2以下に、人口10万人以下の都市に至っては、商店数ではほぼ3分の1、年間販売額も半分以下と壊滅的な状態で、誰に何を訴えかけたいか分からないゆるキャラをいくら活用したところで、それほど効果は望めないでしょう。
大都市には、大都市の良さがありますが、人口の多さのせいで、自分がアノニマス(匿名)であるのが当たり前になってしまい、「街中が常にhappenしている状態」というのは、地方都市でしか創ることができないのかもしれません。
最近ではビジネス界でも、街づくりでも、よくストーリーが重要だと言われます。そういった意味では、決まりきった典型的なイメージがある大都市よりも、それぞれの文化や特色がある地方都市の方が有利でしょう。
また、かつての地方都市は、とにかく必死に企業勧誘や特産品などを作って自分たちの存在をアピールしてきたのに対し、これからの時代は、自分たちの豊かなライフスタイルを都会や企業に向けて発信する時代であり、賃金や設備が安いというだけで、地方に拠点を置いている会社はいずれ海外に移転しなければならなくなるでしょう。
最初からオリンピックに出ようなんて思う必要はなく、まずは県大会で確実に優勝できるような企業が増えていけば、日本はもっと面白くなると思うんだけどな。

フランスの地方都市にはなぜシャッター通りがないのか: 交通・商業・都市政策を読み解く
- 作者: ヴァンソン藤井由実,宇都宮浄人
- 出版社/メーカー: 学芸出版社
- 発売日: 2016/11/29
- メディア: 単行本