寿命を縮めるものの代表格としては、タバコが当たり前のように挙げられますが、実際には、タバコなんかよりも孤独の方が寿命を短くする大きな要因になるそうです。
アメリカで行われた調査によれば、社会的に孤立している人は、社会的なネットワークを持っている人と比べて、男性は2.3倍、女性は2.8倍死亡率が高く、また、入院して誰もお見舞いに来てくれない患者さんのおよそ70パーセントが6ヶ月以内に亡くなりますが、お見舞いに来てくれる人が2人以上いると、6ヶ月以内の死亡率はわずか26パーセントにまで抑えられると言います。
政治哲学者のマイケル・サンデル氏が指摘するように、無形資産の中には本当の意味でお金で買えるものと、買えないものがあり、例えば80歳になって親友を物理的に「購入する」ことはできませんし、どれだけお見舞いに来てくれる人の数で死亡率が下がるのだとしても、お金を払ってお見舞いに来てもらうわけにはいきません。
1978年に歌手部門の長者番付で一位になり、富も名誉もすべて手に入れたように見えた矢沢永吉さんは、あるインタビューに中で、本当の幸せについて考え始めたキッカケを次のように述べています。
「なんで? 神様、僕に言ったじゃない、成功手に入れたら、今までの不安なこともクリアにしてくれるって。『なんで?』って思ったとき、『気持ちがいい』とか『ハッピー』というのは、別のレールがもう一個あって、それは仕事で手に入れたり、成功で手に入れるものではないんだ、ということに気づいたんですよね。そのときからです、『幸せって何だろう?』って真剣に考え始めたのは。」
イリノイ大学名誉教授で心理学者のエド・ディーナーらの研究では、世界中のあらゆる場所で、人々が笑ったり、日常的に楽しい経験ができるかどうかに、収入はほんのわずかしか影響を与えず、アマゾンにザッポスを売却し、億万長者となったトニー・シェイも「思い返してみると、自分が幸福だと感じた時は、お金を一切使っていなかった」と述べています。
男性と女性では、女性の方が平均寿命が明らかに長いですが、女性の方が比較的お喋りで、コミュニケーションを取ることが上手いところからも、これは十分に納得がいきます。
矢沢永吉さんのように27歳で幸せについて考える時間を持てれば大丈夫なのかもしれませんが、80歳になって、誰もお見舞いに来てくれなかった後で、幸せについて考えてみても、それは恐らく手遅れなのでしょう。