小説家の村上龍さんは、構想に10年という時間を費やし、205冊という莫大な引用書籍と様々なインタビューを行うことで、「半島を出よ」という小説を書き上げたそうですが、調べた99パーセントの情報は切り捨てられ、書籍の文字として残らない莫大な背景を間接的に吸収できるところに読書の本当の強みがあるのではないでしょうか。
明治大学の齋藤孝教授は、読書をしている人の会話にははっきりとした「脈」があり、読書をしていない人の会話は、相手の言ったことに関係なく、「てゆうか」という始まりで、相手の話の要点を理解して、自分の角度で切り返すことができず、親しい人以外とは質の高いコミュニケーションを取ることができないと言います。
読書のすごい所は、文字は所詮ただの活字かもしれませんが、頭の中でどんどん映像になり、時間が経つにつれて、次第に自分の声になるところだとも言えるでしょう。
また、活字から物事の情景を思い描いたり、目に見えない理論や考えを読み取る必要があるため、読書には想像力が必要になり、活字から物事をしっかり想像できる人は、電車の中で化粧を直していたら、周りからどのように思われるかは安易に「想像」できるため、読書量とその人の品格は大きく比例するものなのかもしれません。
当たり前のことですが、自分一人の人生で経験できることには限界があり、読書をすることで、他人が習得した脳のかけらを自分の脳に上手くくっつけて、脳を膨張させ、今までの自分の脳では受容できなかったものが、読書が増えるにつれて、どんどん受容できるようになっていきます。
世界で最も裕福な二人、ビル・ゲイツとウォーレン・バフェットはある大学の講演で、ある生徒から「もし、お二人が何か特別な能力を手に入れられるとしたら、どんな能力がほしいですか?」という質問に対して、「本をできるだけ速く読む力がほしい」と回答しており、世界中の人が羨むような地位と名誉を手に入れてもなお、どうしても手に入れられないものが読書の中にあるのかもしれません。
「心が変われば行動が変わる。 行動が変われば習慣が変わる。 習慣が変われば人格が変わる。 人格が変われば運命が変わる。」という有名な言葉がありますが、恐らく心が変わる最初のスタートは読書から始まっていくのではないでしょうか。