Good Life Journal

日常生活における「疑問?」を「確信!」へ

『君の名は』が気づかせてくれた日本の組紐「いつでも連絡が取れる世界だからこそ、解けないように。」

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4回でも5回でもとリピーターが通う現象が話題になった映画「君の名は」は、中国とタイで日本映画歴代興行収入1位、フランスのメディアでは軒並み4つ星を獲得し、4月からの北米公開を前にして、世界で最も収入を得た日本のアニメ映画になりました。

「君の名は」を宣伝プロデュースした弭間(はずま)友子氏が「もともと海外展開を目指したわけではなかった」と言うほど、翻訳でカバーできないところもある内容で海外の人には通じにくかったはずなのに、フランスのある新聞は、「『組紐(くみひも)』が映画のキーの一つであり、『結び』の概念が物語の軸の一つとして描かれているからだろう」とヒットの理由を分析していたと言います。

1年に5人程度だった体験者が映画によって1ヶ月に50人というまでになったという福岡市の組紐づくりの体験教室には、確かに海外の人からの問い合わせも増えているということですし、世界の多くの人が映画に描かれた「組紐」に惹かれるのは、何か共通した意味を思い出させるからなのかもしれません。

映画で主人公の少年と少女を「結ぶ」ものとして描かれている組紐ですが、縄文時代から見られた「紐」は次第に、物をくくりつけるだけではなく、目に見えないものをくくりつけ、結び合わせるものとなり、魂と魂を結びつける「霊の緒(たまのお)」や長く続いていることを意味する「年の緒(としのお)」など、日本人に「結び」の信仰を生み出しました。

東京芸術大学名誉教授の大岡信(まこと)氏によると、古代の愛し合う男女は相手の衣服の紐を互いに結び合い、次に会うときまでは解かないと誓い合ったそうで、紐を結ぶことは愛情表現でもあり、愛する人の健康や安全を祈ることでもあったということです。

組紐とは3つ以上の糸束を交差させてできた紐のことを指しますが、何百という糸束を何千回と交差させて作られることもあり、鎌倉時代になると一揃いの鎧に300メートルもの組紐が使われたというほど、紐は組紐となることで頑丈になっていったのでしょう。

けれど、着物の帯を締めることもなくなって紐の信仰が忘れられていく中で、人同士の結びつきは弱まるばかりなのかもしれず、そういった危機感は、たとえば女の子の名前ランキングトップ10の中に、「結」という字を使う名前が3つもランクインしていることなどにもつながっているとは言えないでしょうか。

いつでも連絡をとれない世界だったから、解けないように、つながるようにと祈りを込めたものを身に着けていた頃のように、目に見えないものでつながる「結び」の精神を今、私たちは取り戻し始めているのです。

組みひも (1977年) (カラーブックス)

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  • 作者: 原野光子
  • 出版社/メーカー: 保育社
  • 発売日: 1977/10
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新しい組紐の世界

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  • メディア: 単行本
 
組紐(日本の美術 No.308)

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  • 作者: 松本包夫,今永清二郎
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  • 発売日: 1992/01/15
  • メディア: 単行本