眺めが良いマンションの高層階の部屋や、湖や海など自然に隣接する家の家賃が高いのは、人類が太古の時代から安全のために周囲を見渡せ、水や食料を獲得できる環境を探しながら進化していたからで、言わば、高い家賃は自分の遺伝子の欲求を満たすためのものと言えます。
そう考えれば、日本各地にタワーマンションが乱立しているのも、生活から自然を切り離して生活している私たちの遺伝子が、足りないものを補おうとしていることの表れだと言えるのかもしれません。
しかし、眺めの良い場所に住んだところで、肝心の自然との距離はほとんど縮まらないでしょう。
医学の父と呼ばれているヒポクラテスは約2400年も前に、「人間は自然から遠ざかるほど病気に近づく」と指摘していましたが、実際、現代人の生活は家は清潔で、エアコンを使って温度はいつも定温、明るさも一定なので、人間が本来動物として生きていた時代から共存していた寄生虫や細菌を遮断しています。
近年、アトピーの子供が増えているのは、そういった環境で生活していて体の免疫系がおかしくなってしまったのが原因だと考えられおり、本来、体内に入ってきた悪い菌を攻撃するはずの免疫系が自分の細胞を攻撃するようになるからなのだそうで、アトピーだけに限らず現代病と呼ばれるような病はほとんど自然不足によるものなのです。
アメリカで自閉症の子供たちを1ヶ月間キャンプに連れていったら、これでもかと言うほどダニやいろんな虫に刺されて、自閉症が治ったという話がありますが、それは今まで清潔な環境で怠けていた免疫系がビックリして本来の仕事をするようになったからなのでしょう。
サグラダファミリアはアントニオ・ガウディによってプラタナスというスペインの街路樹の形をモチーフにデザインされたことは有名ですが、ガウディは大切なことは全て自然が教えてくれるとして、次のように語っていたそうです。
「まずは自然を知ることから人間は全てが始まるのです。まさに私たちは植物ありきです。」
実際、私たち人間と植物とでは遺伝子的には40パーセントくらいまでは同じだと言われているのですから、親しみを持つために、毎週山にキャンプに行くことは難しくても、部屋に観葉植物を置いたりするところから始めるのが良いのではないでしょうか。

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