パナソニックの創業者である松下幸之助さんによれば、日本は欧米諸国と比較して昔から「契約」と言う概念が希薄なのだそうで、それは日本が旧幕時代から口約束で商売が成立するほど人と人とが信頼しあう民度の高い国だからなのだと言います。
しかし、現代社会では人と人との信頼関係が薄くなっており、そうなってしまったのは、現代人が電気などのエネルギーがあれば人の助けなしに生きられると考えるようになってしまったからでしょう。
江戸時代は、江戸から京都まで行くために、多くの人手と2週間という時間をかけて歩いて行ったのにも関わらず、現代では新幹線を使えば、たった3時間程度で東京から京都に到着できるのですから、人の力が軽視されるのは当然なのかもしれません。
ただ、私たちが使っているエネルギーは石油、石炭、そして天然ガスなどの化学燃料から生み出されたものであるため、現代のこの便利な生活は自然に支えられていると言え、言い換えれば、自然の力なしでは現代社会は成り立たないのです。
ところが、人々はあたかもそれが自分の力のように勘違いしてしまったことで、昔は大きく見えていた自然が相対的に小さく見えるようになってしまい、それに伴い、自然の一部である人間も軽く見るようになってしまいました。
最近の日本で総理大臣が変わったり、新しい政策が打ち出されても、大して国の状況が変わらないのは、人が軽く扱われているために、誰も人を本気で頼ったり、信じていないからだと言えるのではないでしょうか。
社会は基本的に人の力で成り立っており、その証拠に、昔の日本では松下幸之助さんが言うように人間関係や信頼だけで商売が成り立つほどでした。しかし、それは裏を返せば、信頼が欠けた社会は成り立たないということにもなるのです。
もう一度、昔のように人と人が互いに信頼できるようになるためには、まずはエネルギー消費を抑えるなどして自然に敬意を示す必要があり、そうしていれば自然の一部である人間に対する敬意も取り戻せるのではないでしょうか。