スターバックスには、スターバックスが大好きだという女子高生が心臓病の手術のため海外に渡航する日の朝、彼女の好物であるシナモンロールを頼まれたスタッフが就業時間外にもかかわらず早朝に駅まで届けたというエピソードがあります。
スターバックスコーヒージャパン元CEOの岩田松雄氏によると、スターバックスのライバルや同業者は他のコーヒーショップではなくリッツ・カールトンやディズニーであり、スターバックスはコーヒーを売っているのではなく感動経験を提供しているのだそうです。
スターバックスの成功の秘訣は物を売って儲けるだけでなく、この「人々に奉仕する」という精神だと考えられ、ハーバード大学では、妻のために食事を作ったり近所の公園でゴミ拾いをするなど、人は他人のために時間を使うことで自分に自信を持つことができるようになり、物事を成し遂げられるという感覚が助長される結果、時間の豊かさの感覚が増すという研究結果が発表されました。
自分が受け取るよりも他人に多くを与えるというのは世の中の最も成功している人に見られる特徴ですが、この特徴は実は最も成功していない人にも共通しているものです。
他人に利益を与えることが成功に繋がらないのは、ひたすら与えるばかりで自分が疲弊してしまうからであり、自分を大切にできない人が他人を気遣ったり優しくするなんてできるわけがなく、成功する人は他人の利益だけでなく自分の利益にも高い関心を持っているとしてビル・ゲイツは次のように述べています。
「人間の本性には2種類の大きな力がある。一つは自分の利益であり、もう一つは他人に対する配慮である。資本主義の未来はこの二つを合わせたハイブリッドエンジンだ。」
私たちの生活時間は食べ物からエネルギーを得る以外にほとんどエネルギーを使っていなかった縄文時代に比べて30倍も速くなっており、豊かで便利な社会であるにもかかわらず、幸福感がいまひとつ上がらないのは、心臓の拍動が縄文人と同じである私たちが、そんなに速い社会の時間についていけていないからです。
ダライ・ラマ法王は21世紀において、「他人への愛情が自分の幸福になるという価値観が大事になる」と表現していますが、昔に比べて時間が増えたはずの私たちが時間を豊かに感じられない理由は、他人に利益を渡すことは自分の利益がなくなると考えるからなのかもしれません。
少し考える角度を変えれば、もっと幸せになれるはずなのに本当に勿体ないことのように感じてしまいます。

スターバックスのライバルは、リッツ・カールトンである。 本当のホスピタリティの話をしよう (ノンフィクション単行本)
- 作者: 岩田松雄,高野登
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2014/03/01
- メディア: 単行本