不景気には、消費が落ち込む流れに反して化粧品の売り上げは伸びるということが知られていて、「リップスティック効果」と呼ばれています。
赤い色が際立つほどに女性の顔は女性らしくなるという研究報告もあり、永遠のセックスシンボル、マリリン・モンローも、もともとの薄い唇に5〜6種類の口紅を使ってセクシーな赤い唇をつくりあげていたそうです。
女性が苦境に立たされたときに赤い口紅を塗りたくなるのは、男性を求める気持ちが強まることの表れであることは一つの事実なのでしょう。
およそ250年前のイギリスで、「結婚してもらうことを目的に、男性を誘惑するために化粧をすることは罪」として、赤い口紅を禁止する法律が採択されたこともあったといいます。
しかしながらその一方で、阪神大震災で被災して疲れ切っていた女性が、口紅を塗って鏡に映った自分の顔に血色が戻ったのを見て、「大丈夫、やっていける。生き抜いていける」と自分に言い聞かることができたという話がありました。
難民生活をしているボスニアの女性たちは食料品よりも口紅を欲しがったそうで、そういう口紅のストーリーからは、苦境にある女性にとって赤い口紅は“必需品”のようなものなのだと感じられます。
British Heart Foundation(イギリス心臓財団)が1000人の女性を対象に行った調査では、26パーセントが赤い口紅をつけていると自信が持てると回答していました。
マニキュアの赤い色が爪に乗るだけで手を見るたびに気分が上がるように、赤い色を唇にのせてみるだけで、落ち込んでいたり、不安を抱えているときにも前向きな気持ちが生まれるのです。
「赤い唇は大胆すぎる」と敬遠しがちな日本の女性に対して、元ピチカート・ファイヴのボーカリスト 野宮真貴さんは「赤い口紅は女性の誇り」と言い、「ハイヒールを履くよりもずっと楽なので、月に一度と言わず、週に一度くらいはトライしてください」と語りかけました。
リップスティック一つでそんなに変わるものかと疑ってしまいますが、耳の聞こえない人は「声によって女友達が化粧しているかどうかがわかる」ともいいます。
気分の冴えない日には、やけ食いやショッピングで憂さ晴らしをするよりも、赤い口紅を塗ってみる方がずっと健康的で、素敵な習慣のような気がします。

マリリン・モンローという生き方 劣等感を持つ女は美しい (新人物文庫)
- 作者: 山口路子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 中経出版
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