ある調査によれば、現代の日本には働いても働いても豊かになれない年収200万円以下のワーキングプア層が約1000万人もいると言われています。
よくワーキングプアが発生する原因として、パートや契約社員などの非正規雇用が増えたことや、企業の人件費の削減が挙げられますが、残念ながらこうした実態を生み出しているのは、安ければ何でも良いと安易に格安商品を手に取る消費者自身だったのです。
例えば、食品産業を見てみると、食品工場は安い商品を求める消費者に合わせて、値段を少しでも抑えるために生産にかけられるコストを計算します。
食品を作る際に考えなくてはならないコストは、材料費、人件費、家賃、そして光熱費ですが、この中でもっともお金がかかるのが全体コストの約半分を占めている人件費であることから、安さを追求するためにまず人件費が最初に削られることになるのです。
と言うのも、毎月30万円を支払っていた職人を解雇して、代わりに月10万円で済むバイトを採用すれば、差額の20万円が浮くので、その分商品の値段を安くすることが出来るでしょう。
ただ、バイトが食品を作るようになると質が安定しなくなるため、包丁を握ったことが無いような男子高校生でも作れるように、レンジでチンするだけの仕入れ品が導入されることになります。
当たり前の話ですが、今まで職人に毎月30万円の給料を支払っていたのは、その職人に特別な技術があったからで、このようにレンジで温めるだけの単純な労働であれば誰でもできてしまうため、必然的に労働者の給料は安く設定されることになるのです。
また、労働環境が劣悪になったとしても、これらの単純作業はいくらでも替えがきくため、従業員が辞めていったところで生産者側は痛くも痒くもなく、安いものを求める需要がある限り、この悪循環はいつまでたっても繰り返されますし、実際に格安店の大半がバイトを中心に回っています。
これは食品だけに限らず、あらゆる産業においても同じことが言えるのではないでしょうか。結局のところ、安易に安い商品やサービスを選択することで、短期的には得をした気分になっても長期的に見れば自らの首を締めることになるのです。
今日選んだものが未来に大きな影響を与えることを考えれば、私たちはもう少し慎重に選択肢を決めるべきなのでしょう。