ある調査によれば、サラリーマンの仕事の約40パーセントは人の話を聞くことに費やされているのだそうです。
それは言い換えれば毎月もらっている給料の4割は「聞くこと」に対して支払われているということになりますが、自分の仕事の約半分が聞くことだと自覚している人はそんなに多くないのではないでしょうか。
日本経済新聞が実施した売れるセールスマンに関する分析によると、社内での成績が高い人ほどあまり喋らず、徹底的に聞き手に回る傾向があるのだそうで、聞き上手の価値は高いと言えます。
よく考えてみれば、「話し方」の本や教室はたくさんあっても、「聞き方」に関する本や教室はほとんどありませんし、「話術」という言葉があるのに「聞術」という言葉がないように、人の話を聞く事はあまり重要視されてきませんでした。
それは「っていうか」という言葉にも表れているように思えます。本来、この言葉は「・・・と言うよりも別の何か」という言い換えの意味合いで使われる言葉なのにも関わらず、最近ではこの言葉は相手の話を切って、自分の好きな話題に無理やり切り替えるために使われることの方が多くなってきています。
さらに現代人のカラオケの様子にもそれはよく表れていて、例えば、誰かが歌っている最中にも関わらず、周りの人は自分が歌いたい歌を探していたり携帯を使っていたりするなど、歌う人ばかりで聞く人がほとんどいないのです。
よく話す事と聞く事はキャッチボールに例えられますが、現代社会はボールを投げる人ばかりでキャッチする人がほとんどいないことを考えれば、キャッチャーの価値が上がるのは当然ですし、『人を動かす』の著者として世界的に有名なデール・カーネギーも「人の話を聞くことで人生の80パーセントは成功する」と述べています。
古代ギリシャの哲学者であるゼノンが「人間は口ひとつ、耳はふたつ」と言ったように、せっかく耳が二つあるのですから、自分が喋る2倍、相手の話を聞いてあげるくらいが丁度良いのかもしれません。