いまの世の中は、すぐに理由や理屈を求める人が増えてしまったせいか、根拠のない根性論やヤル気は批判の対象になりやすく、頭でばかり考える人が増えてしまったため、社会には文字通り「頭でっかち」な人で溢れかえっているようです。
このような状況に対して、ユニクロの社長である柳井正さんは、頭だけで考えることの危険性を指摘しており、極端に言ってしまえば、人生は実践が全てであるため、知識や理屈だけでモノを考える人は問題点を整理して「つまりこういうことですね」と現状分析をするだけで終わってしまっているとして、次のように述べています。
「分析をしている間に状況は刻一刻と変化している。だから、実践しながら考えなくてはならない。当然、時間もかかるし、思ったようにいかないことが多い。しかし、実践がともなわなければ、すべて机上の空論に終わってしまう。」
よく社会の流れは川に例えられますが、社会は川と同様にあっという間に流れが変わってしまいます。
水深は?水温は?なんて慎重に考えている間に増水して流れは激しくなって、「さあ渡ろう!」と決断した時にはすでに渡れない状況になっているケースがほとんどなのですから、とりあえず川に飛び込んでみて、無理そうだったら岸に引き返せば良いだけの話ではないでしょうか。
『経営者の役割』の著者で、アメリカの著名な経営学者としても知られているチェスター・バーナード氏は目的や論理重視の人たちを「有害な知的気取り」と大きく非難しており、それは、不確実性が高い現代社会において、計画が思い通りに進むことはほとんどないからだと言います。
ホンダの創業者として有名な本田宗一郎さんの手は、ハンマーに叩かれて怪我をしていない指がないほどボロボロで、顔や体もレース中の事故で傷だらけだったという話は有名ですが、生前、こんなことを言っていたそうです。
「頭で知ったことは、しょせん、それだけのものです。知識を詰め込むことはできても、知恵にはなりにくい。」
人は何かを成し遂げようとする時、何か特別なアイデアが必要だと考えて頭をヒネリますが、本当に必要なのは誰にでも出来ることを誰も出来ないくらいに徹底してやることで、「とりあえずやってみる」ことは誰にでもできることの一つではないでしょうか。