出版物の発行部数が坂道を転がるように減り続けている中、ドラえもんやおぼっちゃまくん、妖怪ウォッチなどを送り出してきた「コロコロコミック」はというと、ここ10年、波はありながらもその発行部数は減少傾向になく、メインターゲットの小学4~6年生男子に絞れば、2人に1人が読んでいる計算になるのだそうです。
40年前に創刊されてからコロコロコミックのターゲット層は常に、「うんちが好き、ちんちんが好き、ゲームが好き、オモチャが好き」な男子であり、読者は必ず思春期を迎えて卒業してしまいますが、コロコロコミックの和田誠編集長は、「読者の平均年齢が上がらないように、私たちはあえて卒業生を追いかけません」と言い、次のように語りました。
「男の子にはどんどん恋愛してもらいたいし、音楽を好きになってもらいたいし、オシャレに興味を持ってもらいたい。そして私たちはどうするのか。新入生に、うんこ・ちんちんのシャワーを浴びせます。」
そうして、読者層を安定させてきたコロコロコミックですが、この雑誌作りにはコンテンツ以外にも、子どものための心遣いが隠れています。
コロコロコミックの紙は柔らかい子どもの手でページをめくっても手が切れたりしないようにできており、それは紙のコシが強くならず、フワッとなるような技術が使われているからなのだそうです。
その紙作りを手がけてきた日本製紙石巻工場の佐藤憲昭さんは、いつも部下たちに、「お前ら、書店さんにワンコインを握りしめてコロコロコミックを買いにくるお子さんのことを思い浮かべて作れ」と言い聞かせてきたと言いました。
モノを買うときの五感の使われ方を調べたある調査では、モノを見た目で選ぶ視覚優位な人がダントツに多くて、モノの感触を確かめたりする触覚からの情報に頼る人は最も少なかったのだそうです。
刃物などを除けば、暮らしの中でモノを触って怪我をするということはなく、消費者は触覚が鈍り、家電でもなんでも「かわいい方がいい」というのは考えものですが、たまには目をつぶって商品を撫でてみると、花屋さんがバラの棘をとり、紙屋さんが手に優しい紙を作る、買う人を思った人々の努力の上に生活の安心があるのだと、あたたかい気持ちになれるかもしれません。