一般的に人類の歴史は自由を手にいれる戦いだったと言っても過言ではないでしょう。
身分差別、人種差別、そして性差別などを乗り超えて信仰や表現の自由を勝ち取ってきた結果、日本を含む多くの国や地域で結婚、住む場所、そして職業などが自由に選択できるようになり、そういう意味では現代社会はかなり自由な社会になったと言えます。
しかし、自由な社会に生きる現代人のストレスが減ったのかと言えば、そうではないようです。ある調査によれば現代人の70パーセント以上が強いストレスを感じながら生活していることが分かっており、年間の自殺者数が毎年3万人を超えていることは誰もが知る事実でしょう。
つまり自由度と幸福度は必ずしも比例する訳ではないようで、むしろ過度な自由は大きなストレスになるようです。
それは食べ物を例にするとイメージしやすいのかもしれません。と言うのも、一昔前のように食料がほとんどない時代には欲望のままに食べることは幸福に繋がったのかもしれませんが、食べ物で溢れかえっている現代では欲望のままに食べ続ければ病気になってしまいます。
そのため、食べ物で溢れかえっている現代では食べる量を制限するダイエットが必要な訳ですが、恐らくこれは普段の生活にも当てはめて考えることができるはずです。
元陸上自衛隊の教官で現在は心理カウンセラーとして活動している下園荘太氏は自衛隊での経験を振り返って、ストレスを減らす一番の方法は今の生活にほんの少しの制限や窮屈さを加えることだとして次のように述べています。
「軍隊では衣食住、時間、言葉遣いなどについて厳しい制約がある。もちろん制約だらけでは不快感情が大きくなるが、休みの自由は保障されている。嗜好品、宗教、趣味、そして恋愛も自由だ。だから、自衛官の自由度のバランスは『ちょうど良い』レベルに保たれているのだ。」
食べ物が食べられなくて健康を害する時代から、食べすぎで病気になる時代に変わったように、現代は自由すぎてむしろ不自由になるという何とも不思議な時代です。
先祖が自由を獲得するために徹底的に不自由を排除してきたのとは対照的に、私たちが自由になるためには、ほんの少しだけ不自由を生活の中に加える必要があると言うことなのでしょう。