Good Life Journal

日常生活における「疑問?」を「確信!」へ

本田宗一郎「トイレを汚くしている人とは付き合わない。」

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ひと昔前はトイレ掃除がきちんと行き届いているかどうかというのは、銀行が企業に融資をするかどうかの判断基準だったと言われており、それは仕事に直接的に関係しない部分にその会社の本性が出るからだと言われていますが、興味深いことに商品の質と掃除の質は面白いほどに比例すると言われています。

恐らくこの法則は人間にも当てはめることができます。ビートたけしさん、タモリさん、そして松下幸之助さんなど、各業界で成功を収めている人たちの中にはトイレ掃除を日課にしている人が少なくないですし、本田宗一郎さんの「トイレを汚くしている人とは付き合わないと決めています」という言葉はあまりにも有名です。

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↑本田宗一郎「トイレを汚くしている人とは、付き合わないと決めてます。」

最近、物事の良い面だけを見て自分に自信をつけるといったプラス思考が流行っており、一時的にはエナジードリンクを飲んだ直後のように元気になったり行動的になる一方、時間が経つと結局すぐに元に戻ってしまうのは、問題の根本的な部分に目が向いていないことに原因があるからで、これはよく氷山に例えられます。

どんなに小さな氷山でも水面下にはとてつもなく大きな氷の塊があるように、私たちが抱えている問題も同様、私たちが普段意識していない見えない部分に大きな原因が隠れているのです。

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 ↑本当に目を向けるべき部分は、普段目に見えない部分に隠れている

そのため、よく人の感情とトイレの汚れはリンクしていると言われ、その家に住んでいる人の心に不安、恐怖、そして怠慢など普段向き合おうとしない感情の滞りがあると、トイレの穴の奥など、見えない部分や隠れている部分に汚れが溜まるのだと言います。

タモリさんは、しゃがまないと見えない部分や便器にこびりついた汚れを爪で落とすなど素手で掃除することを徹底していますが、トイレ掃除を日課にする著名人の多くが素手で掃除することにこだわっているのは、自分の心の中でフタをしてしまった場所を磨くことで、自分では見えない潜在意識に働きかけようとしているからなのかもしれません。

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↑自分と向き合うことを避けている人は、トイレの汚れとも向き合わないだろう

『ぞうきん1枚で人生が輝くそうじ力 』の著者で人気そうじ講座の講師として知られる船越耕太さんによれば、実際に素手でトイレを掃除する様子をレクチャーすると、大人たちは悲鳴をあげ、一方の子供たちは「僕もやりたい!」と対照的な反応を見せるのだそうで、それは大人たちの心には整理できていない感情があるのに対して、子供たちには後ろめたくなるような感情が無いためだと言います。

人は大人になるにつれて何かと理由をつけて自分の都合の良いように物事を解釈するようになりますが、頭で考えるクセが付いてしまうと、やらなくても良い理由ばかりが浮かんでくるため、無意識のうちに「ま、いいか」とごまかしが蓄積し、整理できなきないほど巨大な感情の滞りとなってしまうのです。

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↑掃除することにいちいち理由をつけていたら、何も始まらない

昔から武士、農家、料理人、そして大工など職種に関係なく修行の第一歩が常に「掃除」だったのは、理屈抜きで一生懸命にやってみる過程で起きた現象や現実から多くを学びとることが人間の根源的な精神を構築するためには無くてはならない存在だと考えられていたためで、安易に「なぜですか?」「なんのためにするのですか?」と質問すると叱られたのだそうです。

ところが、現代社会では目的ありきで全ての事柄について合理的かつ論理的に説明するのが一般的になってしまったことによって、掃除から学ぶといった倫理観が軽視されるようになり、現代に生きる人々は「コレをしたらアレが貰える」という理屈なしには動けなくなりました。

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↑昔は「なんのためにするのですか?」など言えば、思いっきり叱られた

見返りが保証されていなければ損だという価値観が社会に蔓延したために、掃除のように手間暇がかかり費用対効果を具体的な数値で表せないようなものが次々と生活の中から省かれ、結果だけを追い求めたせいで日々の暮らしは雑になり、社会は殺伐としたものになってしまったのです。

そういった手抜きは一度行われると生活の全般に伝染し始め、子育てにも影響を及ぼします。人間には乳児・幼児・少年と、その時々で行うべき教育があり、子守唄を聴かせたり、絵本を読み聞かせるのは感情を育む大切な要素ですが、その過程を省き、塾で知識を覚えさせる事を優先する親が出てきたせいで、人間性が欠落した子供によって今まででは起こり得なかった事件まで起き始めていることは言うまでもありません。

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↑現代人がどんどん利口になるにつれて、人間性は次々と失われていく

その一例が1997年に起きた神戸児童連続殺人事件で、犯人の中学生の「“どうして”人を殺してはいけないのか」という問いに対して、大人たちは誰一人として答えられなかったそうです。

この少年の言動は決して許されるものではありませんが、この事件は目的や効率が最重要視される社会が本当に人々の暮らしを豊かにするのかどうかを真剣に考え直すキッカケを与えてくれたと考えることもできるのではないでしょうか。

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↑現代社会は子供に人を殺してはいけない“理由”を説明しなくてはならないほど荒んでいる

近代経営学の父と呼ばれる経営学者、チェスター・バーナード氏によれば、「ああすればこうなる」のような予定調和的な発想では現代のように複雑な要素が絡み合っている時代を乗り越えることはできず、むしろ目的や論理を重視する考え方は意思決定力を大きく鈍らせるとして、理屈をこねる人たちを「有害な知的気取り根性」と激しく批判しています。

バーナード氏がこのように論理至上主義に警鐘を鳴らすのは、理屈をこねている本人は、目的をハッキリとさせ、論理的に物事を実現したかのように思い込んでいますが、実際は、本人の論理の中で小さく完結してしまい、本人の自己満足で終わってしまうことが多いからなのだそうです。

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↑理屈ばかりこねる人たちはただの有害な知的気取り根性

さらに、ノーベル経済学賞を受賞したフリードリヒ・ハイエク氏も同様に目的や合理性のみを追求することは社会を荒廃させる原因となると指摘した上で、この複雑な現代社会を乗り越える唯一の方法は、現代人が軽視しがちな、本能と理性の間にある伝統(基本)をもう一度見直すことだと述べており、日本人にとって掃除はその一つだと言えるのではないでしょうか。

実際、ACミランで活躍する本田圭佑選手も調子が上がらず、状況が苦しくなった時は必ず基本に戻ると語っており、それは一般の人や社会にも当てはまるとして、次のように語りました。

「特別なことをしようとするのではなくて、『できることをする』、『原点に帰る』という方が、作業としてはやりやすい。それに、今は普通のことをきちんとできる人がいないからこそ、基本をできるヤツが際立つし、それが自分の付加価値になるんじゃないかな。」

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↑「今は普通のことをきちんとできる人がいないからこそ、基本をできる人が際立つんじゃないかな」

また、『ドラゴン桜』の作者、三田紀房さんによれば、ヒット作品は“ありきたりな要素A”と“意外な要素B”を組み合わせる「マンガの基本」に沿って書かれているだけなのだそうで、実際、ドラゴン桜も不良高校生(要素A)と東大(要素B)で成り立っていることから分かるように、個性やオリジナリティが叫ばれる現代だからこそ、基本に忠実であることに価値があるのかもしれません。

例えば、箸の持ち方にしても、オリジナルの「もっとよい持ち方」を模索することにあまり意味はなく、なぜなら、そんな試行錯誤はご先祖様がとっくの昔に終わらせてくれていて、「箸の持ち方はこう!」と決まっているからです。そのため、伝統や基本というものは先人たちが試行錯誤した結晶としての「型」であり、私たちはその型に素直にハマっていれば問題ありません。

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↑個性的なヒット漫画も全て基本に沿って書かれているだけ

最近では個性や自由を重視する風潮が強くなっているため、基本や伝統は軽視されるようになりましたが、だからこそ素直でいることに価値がある時代だと言えるのではないでしょうか。

実際、成功者がトイレ掃除を勧める背景には、「今の自分の価値観で教えの取捨選択をするのではなく、あくまでも素直に言われたことを受け入れてやってみろ」という意味が隠されており、それは素直でなければトイレ掃除をやっても、そこから何も学ぶことができないからです。

さらに、幕末の英雄、坂本龍馬も素直であることに重きを置いていたと言われていて、一度こうだと考えると終始一貫それを守り続けようとする西郷隆盛に「素直でなければ時代に取り残される」と説いたという逸話もあるくらいなのですから、素直さがどれだけ大切なのかが分かります。

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↑実は掃除の意味は、「キレイにする」こととは全然別のところにある

ビートたけしさんは母親や修行時代の師匠からトイレだけは汚してはいけないと言われたため、素直にアドバイスを受け入れ30年以上トイレ掃除を続けていると言いますが、理屈抜きで、誰にでもできることを誰もできないほど徹底してやることで、人が見落としてきたものを一つずつ拾い上げ、そこから価値を見出しているのでしょう。

そういう意味では結局のところ、トイレ掃除自体はほとんど価値を生み出すことはなく、最終的に掃除に付加価値をつけるのは自分の先入観に縛られない素直な心であり、とりあえずやっているうちに自ら価値を発見することで人生が豊かになっていくのかもしれません。

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↑誰でもできる事を、誰もできないほど徹底してやればそれが付加価値になる

理屈をこねるのは、本来するべきことを省いたり楽にするために使われますが、そもそも掃除など、人が面倒だと感じるものは日々の生活を支える重要な要素だと言え、裏を返せば、大切なことで手間がかからないことは一つも無いのでしょう。

ニュースを見れば子が親を殺し、友人同士で殺しあったりなど、社会全体が荒んでいることが分かるように、人口減少が問題視されている現代において私たちが本当に考えなければならないのは、人の数が減ったことではなく、一人ひとりの質の低下なのではないでしょうか。

そういった意味で、これからは効率を競うのではなく、いかに素直に、丁寧に生活を送ることができるかが次の時代を乗り越える鍵になるのだと感じます。

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