累計400万部を売り上げ、映画にも舞台にもなった「佐賀のがばいばあちゃん」には、芸人の島田洋七さんが8歳から8年間預けられていたおばあちゃんのところでの暮らしが描かれています。
「1」と「2」が並ぶ成績表を見たばあちゃんが、「大丈夫、大丈夫。足したら、5になる。人生は、総合力」と言い切るなど、痛快なエピソードに溢れていた毎日を振り返り、島田さんは次のように言いました。
「思うのだが、じいちゃんとかばあちゃんと子どもっていうのは、すごく気が合うんじゃないだろうか。大人は日々忙しいし、子どものことも『教育者』みたいな目で見てしまうが、一線を退いた老人たちには、そういう気負いもなく、一緒に楽しく遊べる。」
最近では、「老人=介護問題」と直結してしまっている気がしますが、年老いていく親を何もできない子どものように扱ったり、面倒は誰がみるんだと勝手に悩んでしまったりする“大人”では、わからない大切なことが、子どもとおばあちゃんの間では通じ合っているものです。
「抱きしめなさい子を 育児書を閉じ 子育てセミナーを欠席し」という言葉で始まる「抱きしめなさい 子を」という詩が今も子育て中の女性を勇気付けていて、数々の育児書で知られる浜文子さんは、浜さんの子どもの頃のおばあさんが一緒だった暮らしのことを、「おまじないが生きていた暮らし」と呼びました。
おばあさんは、浜さんが友達と喧嘩した時には「人間、笑ってないと幸せになれないよ」と語りかけ、また、怪我をした時には、“なむあみだぶつ”調で念のこもった「痛いの飛んでけ」をしてくれたそうです。
子どもと老人は社会の役目に追われずに日々を過ごしているもの同士、親たちとは別の世界でうまく調和しているのかもしれません。
地球上の人間以外の生物には、子供を産めなくなっても次の世代まで生きる女性、つまり“おばあさん”がほとんど存在しないそうですが、現代人の先祖であるクロマニョン人にはすでに“おばあさん”が存在していたのだそうです。
おばあさんがお産の経験を次世代に伝えると出産の安全性が高まり、さらにおばあさんが子育てを手助けすると女性が子どもを産みやすくなって、人口は倍近くに増えるという説もありますし、おばあさんこそが人類繁栄の原動力とも言っても過言ではないでしょう。
子育てに行き詰まったときは、ひとまず子どもをおばあちゃんと生活させてみるだけで、医者や教師といった資格をもつ専門家に頼らなくても、不思議とうまく回り始めるのかもしれません。