Good Life Journal

日常生活における「疑問?」を「確信!」へ

水木しげる「妖怪が住めない世界には人間も住めない」電気の光が半分になれば、人間の幸福度は2倍になる。

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人工衛星から撮影された夜の世界地図を見ると日本が世界のどの国よりも明るいことが分かるように、ネオンサインやコンビニの強い光に照らされることで、日本から闇の空間が次々と失われており、それに伴って私たちも何か大切なものを失っているのかもしれません。

『ゲゲゲの鬼太郎』の作者、故・水木しげるさんは現代人が夜を昼みたいにして暮らすようになったことで、ハッキリと目で見える世界が全てだと思い込み、世界の別の顔を見逃しているために社会がおかしな方向に向かい始めていると危機感を示しており、幸福に生きるためには、目だけでは見えないものも大切にしなくてはいけないとして、次のように述べました。

「近頃、暗闇に潜むワケの分からないものは価値のないものとして蔑む風潮がある。しかし、この世には“目に見えないもの”と“目に見えるもの”とがいて、見えないものは見えるものにイロイロと干渉するようだ。だから人生は思い通りにいかなかったりする。」

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↑夜と昼のバランスが崩れたのだから、社会のバランスが崩れてもおかしくない

脳科学者の茂木健一郎さんは、暗闇は母親の胎内を連想させる命や文化の源として人々の生活の中に無くてはならないものだと語っており、実際、多くの人がたまに来る日食に熱狂するのは失った暗闇を取り戻そうとしているように見えますし、そう考えれば、現代人が抱えている多くの問題は世の中が明るすぎることにあると言えるのではないでしょうか。

現代のように何もかもが明るすぎる世の中では、私たちは目に頼りきった生活をしているため、目が処理しなくてはいけない情報量が多くなりすぎてしまい、私たちは無意識のうちに情報を単純化したり、切り落とすことで、あえて周囲を認識しなくても良いようにしています。

その中で私たちはどんどん自分の周囲のことに対して鈍感になっており、おそらく光によって毎日の生活の半分を占めていた闇が失われていることや、その闇が生み出していた文化が失われていることにも気付いていないのでしょう。

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 ↑暗闇が次々と失われていることに気づいている人はほとんどいないだろう

例えば、夜寝ていると天井のシミが顔のように見えたという経験は誰もが持っているように、暗闇は人に想像させる力があり、日本文化や日本人の精神も暗闇から生まれたと言われています。

神様というのは人間の暗闇に対する恐怖が具現化されたものだと言われていますが、実際、昼間でも薄暗かった江戸時代の家には至るところに闇が存在していたため、台所や寝室、そして便所などそこら中に神様がいて、それはのちに八百万(やおよろず)の神と呼ばれるようになりました。

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↑暗さに対する恐怖心は人に想像させる力を持っている

この八百万の神が家のあちこちに宿っているわけですから、必然的にその家に住む人たちは世界の主は自分たちではなく、自分たちはあくまでも神様に守ってもらっている存在なんだと自覚するようになりますし、それが日本人が謙虚だと言われる理由の一つなのです。

ところが、照明を一日中つけっぱなしにして日々の生活から暗闇を消し去ったことで八百万の神の居場所が奪われてしまい、それに伴い人から謙虚さが失われ、利便性のためなら自然が破壊されようが構わないという精神が宿ってしまいました。

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↑家の暗さとその家に住む人の謙虚さは比例する

一方、光のある生活を好んでいたのは現代人だけでは無く、昔の日本人も同様に光を使うことが好きだったのだそうで、各地の花火大会や京都の大文字焼きなど伝統的な行事には大量の光が派手に使われていました。

ただ、現代との大きな違いは、当時の人たちがただ単に光を見て楽しんでいたわけでは無く、光によって際立たされた闇と光のバランスを楽しんでいた事だと言われています。

このように光と闇という相反する二つの要素を同時に受け入れ、うまくバランスを取る姿勢は日本人の精神に大きく影響を与え、「本音と建前」もその中で生まれた文化の一部だと言えるのではないでしょうか。

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↑光と闇が作り出すバランスに美意識を感じた日本人独特の感性

いったん集団に属してしまうとそこから簡単に抜け出すことが出来ない日本社会では、集団内での自分の立ち位置が非常に重要なため、個人の意見を進んで述べるより全体との合意作りが重要とされています。そのため、周囲と調和するために建前が使われ、自分の身を守るために本音が使われてきたました。

この本音と建前は光と闇の関係に似ており、光が自分自身をさらけ出す本音であるならば、闇は身を隠して身を守るための建前であるため、本音と建前は精神のバランスを保つ上で重要だと言えます。

ところが、近年、暗闇はよく見えなくて危険だというネガティブな印象を抱く人が増えたことで暗闇が排除され始めたように、一時的にその場を取り繕うために使われる建前は、それが嘘か本当かがハッキリしないため、良くないという風潮が流れ始めたことで、社会から建前が忘れ去られようとしているのです。

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↑社会で調和していくための「良い嘘」がどんどん失われていく

そもそも、建前は集団の中で他者と調和するために生まれた概念であるため、それが失われてコミュニケーションが本音だけになってしまうという事は、集団への帰属意識が低下して個人主義が進むことを意味し、実際、現代ではマンションに住んでいても隣人の顔や名前すら知らないというのが当たり前になってしまいました。

このように、暗闇など目に見えないものを排除し、光を照らして目に見えるものだけに価値を置くようになった結果、今や日本文化や日本人の精神は失われてしまいました。そういう意味で、本当に大切なものは目だけでは見ることはできないのかもしれません。

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↑建前が失われた社会では個人主義がどんどん進む

見た目中心の価値観が社会に浸透してしまった現代では、ついつい目に頼りきりになってしまいがちですが、ニューヨーク・ヤンキースなどで活躍した松井秀樹選手は選手生活の一番の思い出の一つに、巨人時代に長嶋監督と毎日試合が終わった後に行った闇特訓を挙げました。

長嶋監督は、本当に良いスイングは目で見るのではなく耳で聴かないと判断できないと言い、電気を消した部屋に松井選手を呼び出し、真っ暗闇の中で監督が納得するスイング音が出るまでひたすら素振りをさせたのだと言い、実際、松井選手はこの闇特訓によって巨人の四番打者に成長したと言われています。

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↑長嶋監督「本当に良いスイングは耳で聴かないと分からない」

さらに、ホンダの創業者、本田宗一郎さんもエンジンの修理をする際は目で確認するのではなく、エンジンの音でどこに不具合が発生しているのかを確かめていたそうです。

最近では、多くの人や企業が「数字はウソをつかない」などと言い、データに絶対的な信頼を寄せている一方で、彼らはそのデータを収集・集計・報告しているのが感情を持つ人間だということを完全に忘れており、人間が作るものは当然不完全であるため、目だけで見ることのできる世界は私たちが思う以上に狭いと言えます。

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↑本田宗一郎「エンジンの音で不具合がわかる。目なんてアテにならない」

『ブラックジャック』や『鉄腕アトム』の作者として知られている故・手塚治虫さんも生前、科学万能の時代に生きている人たちが目に見えるものだけを信じている状況を愚かだと批判していました。

なぜなら科学をギリギリのところまで追求していくと、最終的には知識だけでは解決できない問題にぶち当たるからなのだそうで、興味深いことに歴史に名を残す科学者、アイザック・ニュートンやガリレオ・ガリレイも神に対して非常に信仰的だったと言います。

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↑優秀な科学者ほど科学の限界を感じ、宗教的な思想を持つようになる

日本では暗闇に八百万の神を見出してきましたが、現代社会は光で何もかもが照らされてしまい、その結果、八百万の神を生活から失ったために人々はすがるものを失くしてしまい、その結果、その穴を埋めるかのように新興宗教に加入する人も少なくありません。

例えば、最近、幸福の科学に出家して話題となった女優の清水富美加さんは自身の著書『全部、言っちゃうね。 〜本名・清水富美加、今日、出家しまする。〜』の中で、殺伐とした世界で心が削られいく中で何か信じれるものが欲しかったと、次のように語っています。

「別に、神様なんていないって言うんだったらいいんですけど、いるって信じた方が生きやすいよって思っています。それに、神様の仕事にたずさわっているという喜びは何ものにも代えがたいものだと思いました。」

彼女のように新興宗教に心の拠り所を見いだすことが良いことなのか悪いことなのかは、人それぞれ感じ方が違ってくるのかもしれませんが、中には地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教のように間違った方向へ進んでしまう組織が少なからずあることは事実です。

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↑すがるものを失って、現代人はどうすれば良いのか分からなくなってきている

ノーベル平和賞の受賞者で世界的に著名な仏教指導者のダライ・ラマ14世は私たちが幸せに生きてゆくためには、目に見える物理的な要素と目に見えない精神的な要素を両立する必要があるのにも関わらず、現代人はどちらか一方に偏りがちだと述べています。

つまり、どんなに知識や教養を身につけたところで科学の力が及ばない世界に対する想像力が伴わなければ、その知識の価値は半減してしまいますし、逆にいくら想像力が豊かでも知識や教養がなければ視野は狭くなるため、知と心は常に共存する必要があるということです。

そして、この均衡が失われれば人は深い悲しみや孤独の状態に苦しむこととなり人間社会は荒廃すると述べましたが、水木しげるさんが「妖怪が住めない世界には人間も住めない」と語ったように、人々が見えない部分を想像する力を失えば失うほど、この社会が住みにくくなることは容易に想像できます。

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↑どんなに知識を持っていても、見えない世界に対する想像力が欠けていれば意味がない

メジャーリーガーのイチロー選手がアメリカで3000本安打を達成し、ベンチで涙を流している場面について、記者がある番組内で「涙を流した時に何を感じたのですか?何が涙を流させたのですか?」と質問すると、イチロー選手はあらゆるものに答えを求めようとする姿勢は間違っているとして、次のように答えました。

「そんな答えを詮索するのは全くの無粋ですよ。(そういう質問をするのは)手品の種明かしをして欲しい人ですよ。騙されて楽しんでりゃ良いんです。騙されて楽しんでるのが良いわけでしょ。こんな涙の理由なんて見てる人がそれぞれ勝手に考えてれば良いんですよ。」

人は未知に遭遇すると、それを理解したり分類したい衝動に駆られます。しかし、人々の記憶に残るような素晴らしい映画には必ずと言って良いほどストーリーのキーとなる謎に包まれたキャラクターが存在するもので、そういった不確定要素が映画を面白くしますが、それは人生に関しても同じことが言えるのではないでしょうか。

私たちは現在、グーグルで検索すれば何でもわかる時代に生きていますが、そんな時代だからこそ、たまにはグーグルでは検索できない領域を自分の想像力を使いながら検索することで、本当に豊かな人生を過ごすことができるのだと思います。

人生をいじくり回してはいけない (ちくま文庫)

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表と裏

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  • 発売日: 1985/03/01
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定本 本田宗一郎伝―飽くなき挑戦 大いなる勇気

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