Good Life Journal

日常生活における「疑問?」を「確信!」へ

結局、「変わっている人」が世界を「変える人」になる。精神病者は現実を正確に理解している人。

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「クレージーな人たちがいる。適合しない人、反抗する人、もめごとを起こす人。四角い穴に丸い杭を打ち込む人。……彼らが人類を先へ先へと動かしていくのです。」

スティーブ・ジョブズが自ら語りかけるアップルの広告、「シンク・ディファレント(Think different)」は、今から20年前、「狂った人たちこそが世界を変える天才だ」と世界に呼びかけました。

アインシュタインやトルストイをはじめとする偉人たちが影響を受けたという哲学者ショーペンハウアーは、狂った人と天才は、それ以外の普通の人たちの生きる世界とは別の世界で生きていることが共通していると言っています。

実際、この広告に登場するアインシュタインにガンジー、そしてオペラのマリア・カラスを含め、世界を変えるほどの天才ぶりを発揮した人たちが、子供のころから普通ではない世界で生きてきたことは間違いなさそうです。

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↑アインシュタインは10歳頃まで人とまともに会話することができなかった

世界を変えた天才の一人、ニコラ・テスラは、エジソンを破って「電流戦争」を征した発明家で、私たちの家庭に送られる電気から、風力や太陽光などの自然エネルギーまで、現代だけではなく未来の生活の基盤にまでその考えが応用されています。

そういったテスラのアイデアとともにあったものは、極度の恐怖とコンプレックスでした。

幼いころからテスラは、何か物体について考えるとその物体が目の前に出現するという幻覚に悩まされていましたし、重度の細菌恐怖症もあったため、食事はきちんとしたレストランにこだわり、店にナプキンを何枚も用意させて、自分でナイフから皿まで全部拭かないと気が済まなかったそうです。

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↑精神病になりやすい人は犯しい人ではなく、現実を正しく見ている人
そんな常識はずれな性質はテスラに人並みはずれた発想を与えてくれました。

実際、テスラは目の前に氾濫する幻覚のイメージが、以前自分が見た印象にすぎないと気づいたとき、人は自分の意思で動いていると思っているけれど、単に目や耳などから入ってくる自分の外側にある情報に反応して動いているにすぎない、まるで人型の機械のようだというアイデアを手にします。

「機械のようなものである人間がすることは、機械にもできるはずだ」と考えたテスラは、1892年という、まだ最先端の工学者たちが蒸気機関車の速度記録を塗り変えていた時代において、感覚器官まで備えたロボットの構想を持ってロボット製作に取り組んだそうです。

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↑自分はロボットのようなものなのだから、ロボットだって人間のようになれるはずだ

これまでの歴史において社会の時流を決定的に変えたリーダーたちの精神状態を分析したタフツ大学教授のナシア・ガミーは、著書「一流の狂気」の中で、普通でないことによってリーダーとしての能力が減ることはなく、むしろ増強されることもあると述べていました。

ガミー教授のいう「普通でない」というのは必ずしも精神病患者であることを意味するのではなく、精神病への「なりやすさ」をはかったときに「なりやすい」傾向にある人のことを指します。

そして「なりやすい」人は、精神病になっていないときであっても、生涯に渡って正常の人にはない見方で世界をとらえているようです。

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↑正常である限り見えてこない現実がある

たとえばアメリカの公民権運動で白人たちの心をも動かしたキング牧師は、精神科医たちが「私たちは何よりもまず、正常で、精神的に健康な状態でなければいけないんです」というのに対して、「世の中に対して不適合の状態になることを断じて避けてはならない」と反発していました。

それは、キング牧師自身、死ぬことばかりを考えていた時期があり、『僕はまだ成長できるんだろうか?』『いろんなことをまだやっていけるんだろうか?』と問いかけて止まらなくなるなど、今で言う、うつ病の兆候があったためなのかもしれません。

実際、時代の先を行き、世の中を変える人たちがうつなどの、精神を正常に保てない状態に陥ることは珍しくなく、その要因は、彼らが精神病に「なりにくい」ところにいる人たちと比べて、現実をより明確に正しく見てとっているからでもあるのだそうです。

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↑精神病者のように現実をしっかりと受け止めたければ、周りの刺激的なものをすべて遮断しろ
うつ病の人がどのくらい現実に対する判断力を持っているのかを調べた心理学の実験で、被験者に「ボタンを押してランプが点灯するのを観察してください」と言っておきながら、実のところは研究者側で点灯をコントロールしておいて、どのくらいの被験者が「ランプを点灯させているのは自分ではない」と気づくかを実験したことがあります。

被験者がボタンを押したうちの75パーセント、つまりボタンを押したほとんどの場合にランプが点灯するようにセッティングして、うつ症状をもつ人のグループと、もたない人のグループで結果を比較すると、うつ症状のあるグループは半数の人が「自分で点灯をコントロールできていない」という事実に気づきましたが、うつ症状のないグループで気づいたのは、たった6パーセントしかありませんでした。

この実験はもともと、うつ病の人が現実をきちんととらえられないという結果を予想して行われたのに、反対にうつ病の人たちのほうが現実的な判断力が強く、正常な人たちは現実に対して「錯覚」を持ちやすいと示すことになったのです。

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↑うつ病の人達は現実をしっかり捉すぎていて、錯覚に陥りやすい

前述のガミー教授は、正常な人たちが持つ「錯覚」は、ものごとを複雑に見ることを拒否し、誤りに気づいて学ぶことを難しくするため、正常な人はリーダーになると不幸を大きくしてしまう危険があると述べていました。

ナチス政権のホロコーストにおいても、彼らなしではヒトラーの独裁はありえなかったといわれるナチスの指導者たちは、心理テストの結果、精神状態が際立って正常だということが示され、裁判で彼らと向き合った検事は次のように述べていたといいます。

私はまだこの人たちのうちの誰からも、戦争を始めることに関与したことを後悔しているという言葉を聞いておりません。彼らが唯一後悔しているのは、戦争に負けたということだけです。

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↑正常な人の錯覚は重要な現実を覆い隠し、間違いは助長されていく

精神病になりにくい人が現実を別の見方で受け止めようとするなら、自分の外側の世界にある刺激からできる限り遮断された状態にすることで、精神病になりやすい人の持つような、普通でない感覚を得ることができそうです。

1960年前後のアメリカで行われていた「感覚遮断実験」では、視覚・聴覚・触覚などの刺激から数時間遮断された参加者の多くが幻覚や幻聴を体験し、中には、幻と現実の区別ができなくなって、現実には行っていないのに、スポーツをしたり、ヘリコプターに乗った体験をしたという人もいたといいます。

また、最近の研究でも、たった15分の間、音や光、においなどの外部からの刺激が遮断された場に置かれた被験者の多くが幻覚を感じ、ほぼ全員が「非常に特別な、もしくは重大なことを経験した」と答えたそうです。

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↑自分から自分以外を切り離さなくては、世界に飲まれていくだけ
刺激を遮断したくても、私たちはすでにモノも情報も消化しきれないほどある世界にいるため、刺激から離れるのは簡単なことではありません。

イマジネーションは知識よりも大事と言っていたアインシュタインは、田舎で一人きりで過ごしたことで、「静かで単調な生活がいかに創造的な思考に刺激を与えてくれるか気づくようになった」と述べており、レオナルド・ダ・ヴィンチは、通常の書き方もできたのに、人が読めないような鏡文字にしてメモを残しています。

そうやって自分だけの世界をなんとかして作ろうとしなければ、私たちは普通でないところには入れないのでしょう。

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↑現代の人にとって自分の世界に入る時間はほとんどない

普通でない感覚を持った人の見つけたことを私たちは当然のように利用しているのに、今の世の中、普通でなくなることには社会から締め出されるリスクがついてくるのが当然と思われがちです。

社会学者の開沼博氏によると、現代社会は、相対的に目立ってしまった人を探し出しては叩き潰し、落ちていくさまに人々は熱狂するという、多くの人にとって理解されない「気持ち悪い何か」を排除できてしまう社会になっているのだそうです。

確かに、『つながる』『共有する』というのを合言葉のようにしてSNSなどでコミュニティをつくっている人たちがいる一方で、どうしてもつながらない人たちは、「自分は他の人とは違うんだ」とつっぱねて自ら社会に属さないでいることを選ぶようにもなっています。

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↑変わっている人が社会に属さなくなると社会が変わる機会は遠ざかる

部落などの差別について数多くの著書を残した塩見鮮一郎によると、鎖国を解いた明治維新後、社会が「異形」ととらえた人を「同形」へとひたすら努力させるようになったのだそうで、明治時代も半ばになると精神的な障害があるとされた人たちは法律によって、家の一角に隔離した牢屋のような部屋に住まわせるようになっていったそうです。

そんな明治の時代を生きた夏目漱石は、これまで複数の精神医学者によって、統合失調症、神経症、あるいはうつ病とも解釈されていますが、漱石自身は、神経衰弱かつ狂っていることによって「吾輩は猫である」などの小説を書けたのだと思えば、その自分の性質に深く感謝すると述べていました。

「吾輩は猫である」は今なお教科書に掲載されて、現代の読者から寄せられる「奥が深い」「声に出して読むと気持ちがいい」という感想は、この作品が古さとは別の次元にいることを示しています。

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↑「変わっている人」が世界を「変える人」になる
普通から外れた感覚を持っている狂った人たちは、歴史だけではなく、未来にも足跡を残すものなのでしょう。

テスラも、亡き後の新聞に、「わたしたちは数百万年後に彼をもっとよく理解することだろう」と掲載され、グーグルCEOのラリー・ペイジや、テスラ・モーターズCEOのイーロン・マスクなど、今世界のトップをいく人たちの心を動かしました。

テスラが考えていたという、宇宙で太陽光発電した電気を地上に送信する「太陽発電衛星」は着々と実現に近づいていますし、私たちの遠い子孫は彼の思い描いた「重力発電」をも当たり前のように使っているかもしれません。

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↑太陽光の次は重力による発電が叶うかもしれない

アフリカの村でもコーラが飲めて、瞬時に誰とでもどこでもつながる、モノも人間関係もグローバル化する中で、ますます「多様性が大事だ」と言われるようになっています。

その多様性がどこまで「普通でない」感覚を受け入れていくのかは、この時代を生きる私たちにかかっているともいえるのではないでしょうか。

まずは自分を正常からはずしてみようと、ひとりプールにでも浮かんでいるように外からの刺激をうまくシャットアウトすれば、学校や会社といったまわりに合わせるのは今より難しくなることは避けられないでしょう。しかし、人を動かすようなアイデアを見つける可能性は膨らみます。

そして一度アイデアの端を掴んでしまったら、ジョブズの言っていたような「insanely great(狂ってるほどすごい)」というところまでいくのに、100年、あるいは100万年かかるとしても進まずにはいられない「変わってる」人になって、世界を「変える」ことができるかもしれません。

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