Good Life Journal

日常生活における「疑問?」を「確信!」へ

東京で1番になれる人など極わずか「東京で埋もれてしまうくらいなら、田舎でナンバーワンの方がいい」

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大ヒット漫画『スラムダンク』に出てくる安西先生の「諦めたらそこで試合終了ですよ」という名言は、真面目で頑張り屋の日本人なら誰もが共感するフレーズですが、現実はどんなに頑張っても、どうにもならない事の方が多いのはないでしょうか。

頑張れば頑張った分だけ生活が豊かになることが保証されていた戦後からバブル崩壊までの時代とは違い、経済などすべてが縮小して小さなパイの奪い合いになっている現代では、努力は実らない場合のほうが多いため、そんな時代において「努力」とか「頑張る」といった根性論は現代人にとってストレス以外の何物でもありません。

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↑頑張れば頑張るほど少しずつ大切な何かを失っていく

よく登山と人生は似ていると言われており、登山では登りは歯を食いしばって頑張る一方、下りは滑ってケガをしやすいため余分な力を抜いて周囲をよく観察しながら下山しますが、これは人生においても同じことが言えます。

高度経済成長期に上り坂を一気に駆け上がったのとは対照的に、現在の下り坂の時代は足元をよく見ながら慎重に進まなければならないのにも関わらず、私たちは相変わらず全力疾走を続けており、このままではいつか大ケガをしかねないため、これからの時代は諦めが肝心だと言えるでしょう。

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↑そろそろ意図的にスピードを落とさなければ、本当に取り返しの付かないことになる

ただ世間では、諦めることは逃げることだと認識されているため、印象が良くありません。

しかし、私たちは朝食のメニューから仕事の段取りに至るまで、限りなくある選択肢のほとんどを諦めて一つに絞って生活しているのですから、そう考えれば諦めることは「選ぶ」ことと考えることもできるのではないでしょうか。

例えば、女子レスリングで世界初のオリンピック4連覇を達成し、国民栄誉賞を受賞した伊調馨選手はもともと55キロ級の選手でしたが、その階級にはあの絶対的なチャンピオン、吉田沙保里選手がいてほとんど勝てなかったため、諦めて63キロ級に移ることで、世界の頂点に立てるようになったという話は有名です。

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↑諦めないということは、結局、最後まで何も得られないということの裏返し

また、最近バラエティ番組などで引っ張りだこの有吉弘行さんも、自分が勝てる土俵を見つけることが大切だと語っており、仕事をするときはブラックマヨネーズなどの人気芸人とガッツリ勝負することは避け、むしろアイドルなどお笑い能力の低い人たちの中で毒舌キャラとして勝負することにこだわってきました。

有吉さんは一時期テレビの仕事がなくなり、貯金も底を突いてホームレス寸前にまで追い込まれた経験を振り返って、お笑い戦争で負けたら自信を無くすだけでなく、食べていくことすらできなくなるため、あえて戦場に出ないのは生き残るための一つの戦略だとして次のように述べています。

「R-1グランプリ出たら?って結構言われるんですけど絶対に出ない。そんな戦場に出ていく気はサラサラないんですよ。お山の大将でいれば良いんです。あくまでも俺は『小さな村の中で一番』で良いんだって貫き通します。東京で埋もれてしまうくらいなら、田舎のナンバーワンの方がいいんですよ。」

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↑日本で2番目に高い山は?基本的にその分野で1番の人しか覚えてもらえない

さらに、2011年に芸能界を引退した島田紳助さんも、大阪でやっと少しずつ売れ始めた新人の頃、まだそんなに仕事が多かったわけではないのに、「勝てない現場には行かない」と決めていたため、自分たちのネタがウケそうにない客層の前で他のコンビと戦うことを徹底的に避けていました。

紳助さんによれば、この世は才能で全てが決まるようにできているのだそうで、仮に才能に通知表のような5段階評価があるとすると、5の才能を持っている人が5の努力をすれば5×5=25で最高の結果が出ますが、逆に1の才能しかなければ、最大限の5の努力をしても1×5=5の結果しか出ないことになると言います。

ただ、才能というのは相対的なもので、例えば、アマゾンの奥地に住む吹き矢の名人が東京で暮らすことになれば吹き矢の能力は何の役にも立ちませんし、反対に東京の敏腕ビジネスマンがアマゾンの奥地で生活することが難しいように、才能というのはその人が置かれた状況によって1にも5にもなることを紳助さんは理解していたため、自分の才能を最大化することができる現場を見極めて、それ以外の現場には一切、近寄らなかったのです。

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↑あなたがカメならば、ウサギと陸で勝負しても勝ち目はほとんどないだろう

このように、この世界は何かを得るためには何かを諦めなければならないというトレードオフの関係で成り立っているにも関わらず、現代人はアレも欲しいコレも欲しいと、どんどん足し続ける生活を送っていますが、このような足し算的な価値観は行き詰まりを見せ始めています。

例えば、環境問題は石油などの自然界にあるものを無理やり人間社会に足し続けてきたことから引き起こされた問題ですし、金融危機に関しても、資本主義が足し算を過剰にやりすぎたことが原因であるように、モノを足して一時的に豊かになったように見えても、気づかないところでは必ず何かが失われているのです。

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↑何かを選ぶということは、何かを諦めるということの裏返しだと理解している人はほとんどいない

資本主義の考え方は、物事は常に右肩上がりで良くなっていかなければならないというのが基本ですが、そこにはトレードオフの概念が完全に抜け落ちているため上手く機能するはずがなく、世界中の人々が財を失ったリーマンショックはまさにその象徴だと言えます。

面白いことに、この金融危機によって世界の人々の諦めの良さと悪さが目に見える形で明らかになりました。

金融街であるロンドンの人々は今までの裕福な暮らしを質素で持続可能な暮らしに素早く切り替え、イタリアでも失業率が12パーセントを超える事態となっているにも関わらず、人々はお金を使わない遊び方を見つけて楽しく暮らす方向へシフトするなど、欧米では国の経済が落ちていくに連れて今までの生活を諦める方向にシフトし始めているようです。

ところが、日本人は豊かだった時代をいつまでも忘れられず、頑張ればもう一度豊かになれると信じて、もがき苦しんでいますが、自殺率は先進国の中で最悪レベルという状況に陥っているように、日本人は欧米人と比較すると明らかに諦めが悪いことがよく分かります。

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↑いさぎよい欧米人と、どんどん深みにはまっていく日本人

このように欧米人が早い段階で見切りをつけて諦めるのが上手なのに対して、日本人がいつまでも素早く決断できないのは、食文化が大きく関係しているようです。

欧米では古くから狩猟が食文化を支えており、その日に捕まえた動物がその日の食事になるため、狙っている動物が自分よりも強かったり足が速いと判断したら、体力を温存して次の獲物を狙うためにすぐに諦める必要がありました。

一方の日本では、米作を中心とした農業が食文化を支えており、狩りとは違って米の収穫は秋なので、その日の作業の努力は秋にならないと結果として反映されないため、ひたすら秋の大豊作を期待して諦めずにコツコツと努力を積み重ねる必要があったのです。

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↑今日の頑張りが秋になれば必ず報われると信じて疑わなかった日本人

一つの土地で集中して作業する農業は、狩りのように獲物を変更することができず、諦めてしまえば秋の収穫ができず死活問題になるため、諦めることは悪だとされ、「苦しみのあとに楽がある」という根拠のない明るい未来を信じて頑張ることで、日本人は粘り強さを身に着けましたが、それが現代おいては「諦めの悪さ」という形で裏目に出ていることは言うまでもないでしょう。

また、農業はグループで行われるため、一人がやる気を無くしたり、途中で抜け出したりすると、他のメンバーにその負担がかかったり、時にはその人が抜け出したことで収穫自体が不可能になってしまうこともあったため、手を抜く人や気力を失う人は仲間から阻害されてきました。

そういう意味において、日本では大昔から「諦める」という行為が社会的に認められてこなかったのです。

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↑日本人の粘り強さは現代においては、ただの「諦めの悪さ」にすぎない

このように歴史的に日本人はただでさえ諦めが悪い民族なのにも関わらず、最近の社会の風潮が日本人の諦めの悪さをさらに加速させているように思えてなりません。

例えば、最近の漫画や歌には「努力」とか「諦めない」といった前向きな言葉ばかりが飛び交い、あたかも諦めずに頑張ることが立派だと言うような価値観を刷り込ませています。

確かに、踏ん張ることも大切なのかもしれませんが、本来は頑張った先の結果が大切なのにも関わらず、多くの日本人が頑張ること自体に価値を見出すという罠にはまってしまい、その結果、本当に諦めざるをえない現実に直面したときに、上手な諦め方が分からずに辛く苦しい思いをするハメになってしまうのです。

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↑社会から聞こえてくる「頑張れ」という声が現代人をさらに苦しめることになる

ただ、諦めの悪い日本人の中にも実は諦めの精神が存在していて、現代人はその精神を忘れかけているだけなのだそうで、小説家の村上春樹さんはスペインで行ったスピーチの中で次のように述べていました。

「日本語には『無常』という言葉があります。永遠の安定とか不変、不滅のものなどどこにもないということです。しかし、日本人はそのような諦めの中にむしろ積極的に意義のあり方を見出してきました。」

「我々は春になるとサクラを、夏にはホタルを、そして秋には紅葉を熱心に鑑賞します。(中略)そして、それらがただ美しいばかりでなく、目の前ではかなく散り、小さな光を失い、鮮やかな光を奪われていくのを確認して、そのことでむしろホッとするのです。」

サクラが散ることで夏が訪れ、ホタルが死ぬことで秋が訪れるように、新しい季節を迎え入れるためには、いま持っている大切な何かを手放す必要があるということを昔の日本人は直感的に理解しており、現代人はその感覚を少しずつ取り戻さなければなりません。

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↑日本人は失われていく春に対して「仕方がない」とフンギリをつけるために花見にいく

人生は常に諦めの連続であり、裏を返せば、欲を出したり過保護になりすぎて、何も諦めたくないという姿勢を誇示することで結局、何も得ることができない人生になってしまうと言えます。

裕福な時代に生きていば、物理的にも精神的にも何かを諦めることは簡単ではないのかもしれませんが、そういう時代に生きているからこそ、どれだけ多くのものを手に入れたかではなく、どれだけ多くを諦めたかが人生の価値を決めるのではないでしょうか。

だって、諦めた数が多ければ多いほど、最後に残ったものはあなたにとって本当に重要なものであるはずなのですから。

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