今朝、何時に起きたか少し思い出してみて下さい。通勤や通学に1時間くらい掛かる人であれば、始業時間から逆算して遅くても7時には起きていたのかもしれません。
でも、そうやって起きる時間を学校や会社に合わせて決めている時点で、すでに時間の奴隷になっていると自覚している人がどれほどいるでしょうか?
「◯時に起きないと間に合わない」といった受け身の理由で1日をスタートした人の生活は、会社に着いてからも受け身の状態が続くことになり、例えば、上司から言い渡された仕事、電話対応、そして緊急の案件に振り回されるなどして、主導権を握れないままどんどん時間だけが過ぎていき、気付いたら終電で帰宅というパターンがほとんどでしょう。
↑寝る前、朝7時にアラームをセットすることは人生に敗北宣言をしているようなものだ
一方で、人生の主導権を握ることに成功している人たちは常に時間を前倒しして行動しており、イエローハット創業者の鍵山秀三郎さん、ユニクロの社長である柳井正さん、そして倒産寸前だった日産をV字回復させたカルロス・ゴーン社長などは朝6時前には出社しています。
さらに、創業3年あまりで全国に1200店舗以上、年商約700億円というカレーチェーンを展開しているカレー専門店「CoCo壱番屋」の創業者、宗次徳二さんも毎朝3時45分に起床することで知られており、常日頃から「人生の成功は、早起きに始まる」と述べているそうです。
↑成功者は時間を追いかけ、そうでない人は時間に追いかけられる
また、あのイチローでさえ、これほど偉大な打者になった現在でも、他の選手より2時間も早く球場に到着して練習を始めることで知られています。
このように成功者たちが時間を常に前倒しして行動することを習慣にしているのは、1日24時間が均等なペースで流れていくのに対して、心のエネルギーは朝でピークを迎えてそこから急速に消費されて、午後にはほとんどガス欠になってしまう事を理解しているからでしょう。
よく人生はマラソンに例えられますが、このマラソンで負ける一番の原因は、レース序盤で他人にペースを乱され後半でバテてしまうことで、一度乱されたペースをレース後半で修正するのはほとんど不可能であるため、勝つためには誰よりも早く1日をスタートしなければならないことを彼らは心得ているのです。
↑朝9時前の1時間は、夜18時以降の3倍の価値がある
よく朝の1時間の価値は夜の3時間分だと言われるように、早起きを習慣にしている成功者たちが口を揃えて言うことに「夜の時間は自己満足のため、朝の時間は自己実現のため」というものがあります。
夜に仕事をする人は「◯時まで仕事をしよう」とまず終わりの時間を決める傾向があるようです。そのため、その時間がくるまでダラダラと仕事をして過ごし、その時間がくると「今日も◯◯時間仕事したぞ!」と間違った充実感に浸る傾向があるので、いつまでたっても結果が伴いません。
対照的に、早朝に仕事を始める人は「始業時間までに終わらせないと邪魔が入る」という時間制限の意識から、常に時間が不足しているという緊張感や切迫感を持ったまま仕事をするため、高い集中力を維持することができるのです。
↑終電まで仕事をしている人が、朝1時間早く出勤すれば残業しなくて済むようになる
実際に、社会生態学者で経済学者としても有名なノースコート・パーキンソン氏によれば、適度な切迫感は人の能力を大幅に向上させるのだと言います。
危険な暗闇の中では身を守るために瞳孔が開いて視覚から最大限の情報を得ようと脳が働くように、多忙な大企業のCEOが一般人の何倍もの仕事をこなせるのは、脳がより正しい判断を下そうと働いて、情報処理速度や瞬発力が飛躍的に高くなるからなのだそうです。
普段の生活でも、毎月5万円貯金するという計画を失敗する人が多いのに比べて、毎月5万円の借金を返済できる人の方が圧倒的に多いのは、借金は返さないと借金取りが来て、家族や職場に借金がバレてしまうという切迫感があるからですが、この時の心理がまさに成功者が早朝に感じているポジティブな切迫感だと考えられています。
↑適度な切迫感を脳に与えると、脳内で化学反応を起こしてものすごい力を発揮する
また、早朝から動き始めることは、高い集中力を保ちながら仕事をこなせるだけでなく、その日1日の流れを作り出す起爆剤になるようです。
人生で起こる事柄のほとんどはスパイラル状になっており、実際、ある調査によると、うつ病に苦しむ人は朝の時間が最も辛いと報告している一方で、幸福度が高い人は朝の時間が最も活力に溢れていることが分かってきています。
なぜなら世の中には慣性の法則が働いているので、自転車のように動き出しはある程度のパワーを要しますが、一度動き出してしまえば、それほど力を入れなくてもスイスイと進んでいくため、朝の滑り出しがその日1日に強力な影響をあたえるからでしょう。
そのため、起きる時間になってもベッドの中でグズグズしているのは、自分の人生に対する抵抗だと言えますし、そうやって朝から勢いを付けそびれてしまうと、その日は1日中リズムに乗ることができず、次の日も同じことを繰り返すという悪循環に陥ってしまいがちです。
↑iPhoneのアラームとスヌーズ機能は自身のDNAに「ダラダラ癖」を送り込む
成功者たちが朝から時間を味方につけて次々と良い連鎖を生み出すことができているのに対して、多くの人が悪い連鎖から抜け出せず、人生に「負けグセ」がついているのは、恐らく朝から鳴り響く携帯アラームが原因なのではないでしょうか。
ある研究によれば、何度も鳴る大音量のアラームを頼りに起きていると、まだ睡眠中の内蔵や脳に大きな負担をかけるだけでなく、脳神経にダメージを与えることが分かってきており、さらに、スヌーズ機能を使うことで脳の睡眠リズムが破壊され、自分のDNAにダラダラ癖を刷り込ませる原因になることが分かってきています。
通常、私たちの脳は、起きる3時間ほど前からコルチゾールと呼ばれるホルモンを分泌し始め、このホルモンが血圧や血糖値を上げることで私たちは朝スッキリと目覚めることが出来るのです。
そのため、もしあなたが普段、6時に起きているのならば、3時頃からコルチゾールが分泌されるように脳内でリズムが組まれるのですが、スヌーズ機能で「あと10分、あと5分」と起きる時間を何度も何度も後ろにズラすことで、次第に脳も仕事を後回しするようになります。
↑スヌーズボタンを何度も押すことは、自分の遺伝子を一つずつオフにしているようなものだ
そして、仕事を後回しにするクセが脳に付いてしまうと、いざ本当に起きる時間になって、今までダラダラしていた脳が大慌てで急激にコルチゾールを分泌し始めるため、脳内は過剰なコルチゾールで溢れかえってしまうのです。
このような脳の状態は「うつ病」の時と同じ状態である事が分かってきており、そのせいで気分は落ち込み、意欲も大幅に低下するのですから、アラームに叩き起こされた朝の気分が最悪なのも納得できます。
ほとんどの人は一回でスッキリ起きられないため、スヌーズを使っていると思い込んでいますが、むしろスヌーズを使っているからいつまでたっても起きられないのであって、そう考えると後回しにして良いことなんてこれっぽっちもないのでしょう。
↑何度も何度もスヌーズボタンを押して起きた朝の気分ほど最悪なものはない
この考え方は普段の生活にも当てはめる事ができ、よく人生でもっとも破滅的な単語は「あとで」と言われるように、世の中で成功している人ほど「今すぐ」やることにこだわっているのではないでしょうか。
実際、『ユダヤ人大富豪の教え』の著者として知られる本田健氏は、お金持ちの生活習慣を研究するために、国税庁から高額納税者名簿を取り寄せ、その中からランダムに億万長者1万2000人を選んでアンケートを送付したところ、高額所得者であればあるほど、アンケートの回答が早かったのだと言います。
↑人生でもっとも破滅的な言葉は「あとで」、もっとも建設的な言葉は「いますぐ」
また、広告の歴史上もっとも優れたキャンペーンの一つとして数えられるナイキの『Just Do It.』は、当時世界一のスポーツ用品メーカーだったアディダスに対抗するために打ち出されたもので、周囲の人たちが「アディダスに奇襲をかけるのはまだ早い」と言って止めましたが、彼らはキャンペーンをただちに実行したことでシェアを18パーセントから43パーセントに急上昇させ、世界一になったという話はあまりにも有名です。
それに、新幹線を例にとっても、新幹線は10時発などの「◯時ちょうど発」の便が1番混雑しており、「◯時ちょうど発」の次の便も“遅刻組”の人たちで非常に混む一方、不思議なことに9時55分など、時間ピッタリの一本前の便は比較的空いていてゆったり座れるため、普段の生活でも「一足早い」ことに越したことはないでしょう。
↑田中角栄「無駄なことは一切するな。オレの早起きの努力が台無しになってしまう。」
昭和の名総理として知られる田中角栄は、徹底して時間の質にこだわっていたと言われていて、「誰よりも早く動き始めて1日の密度を人の2倍にすれば、『人生80年』を『人生160年』にできる」というのが口癖だったのだそうです。
角栄は朝5時には目を覚まし、新聞7紙を斜め読みしたら6時に部下に電話で指示をして、素早く朝食をとると、洪水のように押し寄せる午前中の陳情客400人を相手にしていましたが、ある日、陳情客の1人がニッコリ笑顔で「今日はいい天気ですね」と挨拶すると、角栄が「要件は何だ!」とものすごい勢いで怒鳴ったという逸話があります。
それは、せっかく時間を徹底的に前倒ししても、そこに無駄な動きがあれば全てが台無しになってしまうからで、角栄は仕事では挨拶や長い説明は一切禁止し、「やらないこと」をしっかりと決めることにこだわっていました。
↑田中角栄「挨拶はいらん!要件は何だ!」
アップルのCEOであるティム・クックが朝3時45分に起きてまずメールをするという話は有名ですが、彼の真似をして、朝一番にメールをして徐々に仕事モードに慣らしていくことが習慣になっている人は少なくないかもしれません。
ただ、それらのメールをよく見て下さい。恐らく、前日までの仕事に対する「了解メール」や直ぐに対応しなくても良いメール、もしくは他の人宛に出されたCCメールがほとんどではないでしょうか。
世界最大のビジネス誌『フォーチュン』のある有名記者が2週間の休暇から帰ってみると、700通以上のメールが溜まっていたのだといい、全てに返信をするには1週間くらいかかりそうだったため、彼はそれらのメールを一通も開くことなく全て削除して、すぐさま他の“重要な”仕事を始めたというエピソードがありますが、後にこんなふうに語っていたそうです。
メールが来たからといって、返事をしなければ命に関わるという事はほとんどないでしょう。それに、本当に重要なメールだったら、相手からもう一度送ってくるでしょうから。
↑重要なメールなんて数える程しかないし、本当に重要なら相手が催促してくるだろう
よく人生は短いと言われますが、本当は人生が短いのではなく、私たちが多くの時間を無駄なことに費やしているから短く感じるのではないでしょうか。
そう考えてみると、成功者たちが余計な邪魔が入らない早朝から重要な仕事を前倒しで始め、誘惑が一番多い夜の時間帯にはすでにベッドの中にいるということも十分に納得できます。
人生の主導権を取り戻すためにも、まずは明日から早起きに挑戦してみてはいかがでしょうか。もちろん、スヌーズはオフにして。