Good Life Journal

日常生活における「疑問?」を「確信!」へ

ビジネスの場では、語学力よりもコミュニケーション能力の方が14倍の需要がある。

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「昔々あるところに・・・」で始まるような物語は日本にまだ文字が無かった時代から語られているのだそうです。

日本に文字が伝来したのは4世紀から6世紀と言われていて、そう考えれば物語はそれ以前の弥生時代や縄文時代から親から子、そして子から孫へと語り継がれていることになります。

どうやら人間は太古の昔から物語が大好きな生き物のようで、その証拠に現在でも文字を持たない民族はたくさんいるにも関わらず、先祖から伝わる物語を持たない民族は世界中どこにもいませんし、気候、地形、食べ物、文化、そして人種が違ってもそこには必ず物語が存在するのです。

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↑文字を持たない民族はたくさんいるが、先祖から伝わる物語を持たない民族はいない

ただ子孫に何かを伝えるだけならば、絵を描いたり箇条書きのようなメモを残すだけで十分ですが、それでも世界中でストーリーが語り継がれてきたのは、人に何かを伝えるときに一番優れた方法がストーリーを語ることだと私たちの先祖が知っていたからでしょう。

人間にはストーリーを長期間に渡って記憶できる能力が備わっていて、よく考えてみれば、桃太郎、浦島太郎、三匹の子ぶた、そして赤ずきんちゃんなど、これらのストーリーの内容を思い出せない人はいませんし、小説家の村上春樹さんもこのように語っています。

人類の歴史のなかで、物語の系譜が途切れたことはありません。僕の知る限り一度もない。どれだけ本を焼いても、作家を埋め殺しても、書物を読む人を残らず刑務所に送っても、人は森の奥にこもって物語を語り継ぐんです。

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↑ビジネスの場では、語学力よりもコミュニケーション能力の方が14倍も大切

恐らく、物語がここまで強い力を持っているのは、それが論理と感情の間に位置する「対話」として機能しているからだと言えるでしょう。

例えば、いくら完璧なデータを用意して相手を説得しようとしたところで相手が身構えて心を閉ざしていれば、仮にそれが正論だとしても受け入れてもらえないでしょうし、逆にどれだけ相手の心を掴んだとしても、そこに正確なデータや論理性がなければ相手を納得させることはできません。

そういった意味で人間は論理の動物であると同時に感情の動物でもあると言えます。正確な論理というのはそれを受け入れる感情という受け皿があってこそ成り立つものなので、一方でも欠けてしまうとコミュニケーションは成り立たず、理論と感情の両方の要素を持った対話は人に何かを伝える際に無くてはならないものなのです。

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↑「理解できる」と「理解したい」は全くの別物だと考えるべき

そのため、どちらが正しいかを決める討論をベースにしたようなコミュニケーションの取り方は相手と繋がるというよりは、むしろ相手と差別化を測るものなので調和や繋がりは作れず、逆にそれは対立と分裂を産むことになります。

論理の矛盾を突こうと思えばいくらでも揚げ足取りはできてしまうでしょう。そう考えれば相手を論破することはなんの意味もなく、世代や価値観の違いで生まれる対立を超え、相手に共感を促す対話をしなければ、どんなに良い事柄であっても相手には伝わりません。

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↑揚げ足取りよりも、相手が何を伝えようとしているのかを追いかけるべきなのではないか

報道ステーションの元メインキャスターとして知られる古舘伊知郎さんは以前、財力、学力、もしくは容姿で勝負できたのは大昔の話で、現代はまったく価値観の違う人にも自分の考え方を伝えられるおしゃべりのテクニックなしでは絶対に活躍できないと述べていました。

事実、企業の人事担当者を対象に行われた調査によれば、企業が人を採用する際にもっとも重要視しているのは“相手に伝わる”コミュニケーション能力がトップで約83パーセントにものぼるのに対して、近年騒がれている語学力に関しては6パーセント前後とほとんど選考の基準に入っていないことが分かります。

この数字を見ればコミュニケーション能力は語学力の約14倍もの需要があると言っても過言ではありません。そのため、計算上は学校で英語の授業を週に1時間教えるのならば、コミュニケーションの授業が週に14時間あっても良いはずなのです。

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↑日本には素晴らしい敬語は存在するが、対等な立場で相手を褒める言葉がほとんど存在しない

ところが現代のように学校教育でコミュニケーションが軽視されているのは、日本が近代化を遂げる過程で対話のための言葉が作られなかったことにあります。

どんな国家も自国語で政治や哲学を語ったり、裁判や大学教育などの近代的な活動をするためには、その国の言葉を育てる必要があって、日本も例外ではありませんでした。

例えば、現在私たちが普段の生活の中で当たり前のように使っている「人格」「統計」「絶対」などの言葉は明治時代以前には存在しておらず、夏目漱石や福沢諭吉などの先人によってこれらの言葉が作られたことで、日本語は急速に近代化を果たすことができたと言われています。

17世紀のフランスではまだ哲学を語ることができなかったと言われているように、フランス語や英語は約200年という歳月をかけて言語を近代化させた一方で、日本はたったの30年程度で完成させてしまいました。

しかし、当然その中で積み残してきたものはあったはずで、対話はそのうちの一つなのです。

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↑高度な学問を学ぶことはできるようになったが、隣の人と仲良くする方法は未だによく分からない

また、生まれてから死ぬまで自分の村の外にでないような流動性の低い社会に長期間に渡って暮らしてきたことも日本人が対話を苦手とする原因の一つだと言えるでしょう。

平城京の人口の数十パーセントが渡来人だったという推測がされるほど、当時の日本は今では想像できないほどの多民族国家だったと言われていますが、894年に遣唐使を廃止してから19世紀に開国するまでの約1000年間にわたって、日本語は他国の影響を受けることなく独自の発達を遂げました。

中でも安土桃山時代以降の300年間は極端に流動性の低い社会が形成されたため、農民は生まれてから死ぬまで自分の村から出ることもなく、外国どころか国内の他の地域の文化にさえ触れる機会がなかったと言われています。

そもそも対話というものは、自分とは全く異なった価値観を持つ人たちに何かを伝えるために必要なものなのですから、極端に狭いコミュニティで暮らしていれば対話が発達しなかったのも無理はありません。

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↑狭いコミュニティの中では対話は生まれにくい

日本では対話が育まれなかったため現在の日本語には目上の人間に向かって尊敬の念を示す言葉や、目下の人間を褒めてつかわすような言葉は豊富にあるにも関わらず、相手を対等な立場で褒める言葉がほとんど無いと言えます。

そのため、英語では「wonderful」「amazing」「great」などいくらでも対等に相手を褒める言葉が見つかるのにも関わらず、日本語にはそういった表現方法がないため、スポーツなどをやっていても、相手を対等に褒める際には「ナイスショット」とか「ナイスピッチ」といった外来語に頼らざるを得ないのです。

それに褒める言葉だけでなく、女性と男性との間にも対話のための言葉が作られてきませんでした。その結果、管理職の女性が部下の男性に何かを指示すると、男勝りといわれるくらいキツイ物言いか、過度に丁寧な言葉遣いになったりすなど、女性が男性に指示を出すための日本語もまだまだ定着していません。

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↑どうして現代の子ども達は「サザエさん」より「クレヨンしんちゃん」を好むのか

最近ではグローバル社会や男女平等社会などと呼ばれるように、社会の中で今まで存在しなかった新しい人間関係が生まれてきており、当然彼らが持つ価値観も多種多様になるでしょうから、これからは異なる価値観を許容する対話が無くてはならないのです。

ところが、最近ではLINEで自分の気の合う人とグループを作ってしまえば安土桃山時代よりもずっと狭いコミュニティを作ることができるようになりました。

そのため価値観が全く異なる人と接する機会を自ら減らすことができるようになりましたし、仮に考え方が合わない人がいればブロックしてしまえば良いのですから面倒な相手と対話をする必要はありません。

ただ、自分とは全く異なる相手としっかり渡りあっていかなければならない時代に、対話が生まれにくい環境に身を置いてしまっては、社会と自分自身との間のギャップはどんどん広がり生きづらくなることは言うまでもないでしょう。

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↑今はすぐに誰かと繋がれるけれど、関係を断ち切られるのもあっという間

通常の会話の中では「だから」とか「でも」といった接続詞を使うため、一回の発言が長い傾向にあります。一方で、LINEではこういった接続詞が全くと言っていいほど登場しないため一回の発言が短く、会話というよりむしろ単語だけのやりとりが中心と言っても過言ではありません。

それは現実社会にも影響を与えていて、最近の子どもたちの中には単語でしか言葉を話せない子たちも珍しくなく、例えば、学校の勉強は好きかと尋ねると「べつに」と答え、好きな科目を尋ねても「ない」と答えるなど、ほとんど会話にならないことがほとんどです。

最近「コミュ障」と呼ばれるようなコミュニケーションを苦手とする人が多いのは、このように狭いコミュニティの中でしか生活してこなかったことが影響していると言えます。

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↑会話がLINE化してしまった現代人は言葉のキャッチボールができなくなってしまった

その影響は確実に子どもの感性にも影響を与えていると言えるでしょう。例えば、最近の子ども達に「クレヨンしんちゃん」と「サザエさん」とではどちらが好きかと尋ねると大半の子どもがクレヨンしんちゃんの方を好んでいることが分かりました。

と言うのも、野原しんのすけの家庭は現代の典型的な核家族世帯で、しんのすけの周りには親戚や近所の人など気を遣う場面が全く無いなど、現代の子ども達との共通点が多いからでしょう。

一方の磯野カツオは、波平、マスオ、ノリスケ、そしてタラちゃんなど自分とは全く異なる立場や関係の人たちと上手くコミュニケーションをとり、家庭や社会を上手く渡り歩いていく姿が現代の子ども達とはあまりにも掛け離れているため、子どもたちは見ていて親近感が全く湧かないどころか、むしろ違和感を感じると言います。

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↑家の中に両親と兄弟以外の人がいる生活があまりにも不自然すぎて全く共感できない子ども達

しかし私たちが磯野カツオが世間を渡っていく様子から学べることは少なくはありません。

価値観や立場の異なった人たちで溢れる21世紀の社会では相手に「伝わらない」ことが当たり前で、そこから互いに理解し合える部分を少しずつ広げていき、バラバラの考え方を持っていても一つの社会の中で共存していかなければならないのです。

そのためには小さなコミュニティの中に閉じこもっているのではなく、外の世界で伝わらない現実と向き合っていく必要があり、かの夏目漱石も人々は絡み合い、対話して生きていかなくてはならないと述べていました。

現代のように気に入らない相手を簡単にブロックできてしまうような世の中だからこそ、分かり合えない他者をもっと大切にしていくべきなのでしょう。なんたって彼らこそが対話の原石なのですから。

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