Good Life Journal

日常生活における「疑問?」を「確信!」へ

あのパタゴニアだって、最初は事務作業だけで、手っ取り早く儲けるために作られた会社だった。

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パタゴニアは自然環境保護の必要性を理解する企業同盟を設立するなど環境に関する取り組みにおいて世界的に高く評価されていますが、元々は手っ取り早くお金を儲けられるように作られた会社であり、最初から環境問題を追求した会社ではありませんでした。

人間とネズミの遺伝子の構成は99パーセント同じだと言われ、それは恐らく企業という仕組みにも当てはまることでしょう。

パタゴニアもユニクロやしまむらと同じようにコストを削減しながら利益を追求しなければならないのは当然ですが、パタゴアニアが残り1パーセントの部分で違って見えるのは、オーナーのイヴォン・シュイナード氏が本気で社会や環境を変えたいと願っているからであり、イヴォンはこれからの企業責任について次のように述べています。

「今後、顧客の要求はエスカレートし、環境規制は強化され、資源は余裕がなくなり価格が上昇し、投資家の目も厳しくなっていく。そのなかで、あらゆる側面で事業責任を全うしようとする企業が増えるだろう。正しいことだからするという面もあるが、そうしなければ成功できなくなるからだ。そのような企業と競うためには、自社も同じくらいに責任ある行動をとらなければならない。」

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↑企業も99パーセントの遺伝子は同じ、1パーセント唯一違っているのはどれだけ本気でそれを想っているか

今日、企業が地球の資源を消費するスピードは既に限界を突破し、2012年の時点で、地球が負担できるスピードの1.5倍もの資源を使い続けていることはよく知られている話です。

ベストセラーとなった「バカの壁」の著者で東京大学名誉教授でもある養老孟司氏によると、走行中の自動車の窓に大量の虫がぶつかり続ける結果、一台の車が廃車になるまでに1000万匹の虫が死ぬという驚くべき試算が存在します。

また、全国に約5万店あるコンビニでは1店舗あたり1日平均約30食、衣類に関しては繊維製品を含めると年間約200万トンが廃棄されており、そのうちたった2割だけがリユースやリサイクに回され、残りの8割はそのまま埋められるか焼却ゴミになるそうです。

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↑たった1台の車が廃車になるだけで1000万匹の虫が死ぬ

過去200年ほどの間に、人間が自然に対して行ってきたことがボディブローのように効き始めているこのような環境下では政府の視点も変わりつつあり、国際連合は企業活動を利益(profit)、人(people)、地球(planet)の3つの側面から評価する原則を取り入れています。

しかし、企業が社会貢献や環境保護活動に本気で取り組むためには、財務状態を健全に保つことが最優先の責任であり、しっかりとしたビジネスの基盤と社会貢献のバランスを取りながら、アジア最貧国のバングラデシュからブランド「マザーハウス」を立ち上げた山口絵理子さんは自身の事業に関して次のように述べます。

「ビジネスはビジネス。利益が出なけりゃやっていけない。社会貢献も何もない......ということ。『利益第一』になるという意味ではなくて、NGOではなく、『かわいそうだから買ってあげる』商品でもなく、商品として勝負すると決めたのだから、価格、品質、デザインで勝たなければ、生き残れない。」

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↑同情では、食べていけない。価格、品質、デザインで勝って、本当の価値を出さなければ真のビジネスとしては成り立たない

新潟県三条市の本社敷地内に、スタッフがいつでもキャンプを楽しめるためのキャンプ場を設けているアウトドアメーカー、スノーピークの代表の山井太さんは、ビジネスを考える時はロマンだけではご飯は食べられず、企業として結果を出すためにロマンと経営を両立して売れる仕組みを作る必要があると断言します。

スノーピークの製品には保証書がついておらず永久的に製品の保証をしていますが、その根底には製品期限を定めているのは利益が損なわれるのを恐れる作り手側の一方的な都合にすぎず、「もっといい製品が欲しい」と思う消費者が本当に欲しいと思う製品を提供するのが本来の企業の姿だという気持ちの現れでもあります。

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↑ロマンと経営の狭間から、本当に付加価値の高いモノやサービスが生まれる

最近の知識層や若い世代の人たちには安いモノやかっこいいモノを売る企業より、しっかりと見える形で社会的価値を提供している企業を応援したいという気持ちが強くあります。

冷蔵庫や車など、日常に必要なものが一通り揃って、日本が成熟社会に入っていく過程では、モノやサービスのクオリティーに加えて、製品にまつわる企業の考え方が、今まで以上に利益や長期的な成長に大きく影響を及ぼしてくることでしょう。

パタゴニアで仕事をしている人がパタゴニアに入りたいと思う理由として、会社と自分の価値観が一致していることを挙げる人が多く、パタゴニアが社員だけでなく農場や工場で働くパタゴニアに関わるすべてのスタッフの活動や、パタゴニアのジーンズを染めたインディゴ染料が川に垂れ流されているかどうかといった、製品を作った時に発生する社会的負荷や環境的負荷をしっかり説明しようとする姿勢に多くの人が惹きつけられているのは間違いありません。

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↑21世紀の経営は市場のシェアを伸ばすよりも、マインドのシェアを伸ばす

「洗練されたデザインで環境にも優しい」と世界的な評価を受けている無印良品は「MUJIは控えめさが売り。国外の誰かがそれをクールだと思ってくれるかもしれないが、自分たちからは言わない」として世界で注目されています。

「無印らしさ」は大量消費社会に対するアンチテーゼから生まれ、禅や茶道といった日本の美意識や精神性が色濃く反映されたものであり、日本人が当たり前のこととして持っている自然に対する精神が海外ではブランドの個性として高く評価されるのでしょう。

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↑自分で自分のことをクールだというのは、ただのバカである。クールだと言ってくれるのは、ユーザーや消費者

もともと日本人には「環境」という自然を自分自身から切り離すという概念がなく、山も川も自分たちの一部であるという意識がありました。

江戸時代には誰も環境のことを語らずとも米をといだ後のとぎ汁は拭き掃除や植木の水やりに使うなど自然を綺麗にすることは当然のことで、来日した外国人はみんな江戸の清潔さに感嘆したと言いますが、日本に「環境省」というものができたことで、日本人の一部であった自然が切り離され、自然をわざわざ「環境」という別の存在として認識するようになってしまったのです。

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↑自然の概念は、日本人の遺伝子から取り出されて、「環境省」になった

自然を人間から切り離す価値観は地震や津波を経験しない西欧で生まれたもので、環境の世紀とも呼ばれる21世紀において、ただ売るだけの時代が終わりつつある中、今こそ自然と共存していた日本人の意識を再認識するべきではないでしょうか。

日本の伝統文化である書道は横にお手本を置いて模倣をする臨書からはじまり、最初は個性を意識的に殺していきます。これは欧米の発想でいう独創性やオリジナリティがないということではなく、一見個性に見える我流の癖を徹底的に捨てた後にこそ自分独自の世界が表れるという考えに基づいた精神の修行です。

個より全体を重んじる日本人の精神性は、様々な気候や春夏秋冬の季節、そして地震や災害など自然の変化や脅威に合わせながら生きなければならない日本独特の自然観から生まれたもので、例えば、会社は株主だけのものではなく、従業員、顧客、仕入先、地域社会みんなのものという日本人の考え方にも影響していると考えられます。

ダライ・ラマ法王は「日本は21世紀には非常に大切な国になります。これからは日本人の出番がきますよ」と述べていますが、自然と共に暮らし、周りの人と助け合いながら生きる日本人の伝統的な調和の精神や文化こそが今の世の中に必要なものにちがいありません。

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↑日本人の全体を重んじる価値観は、自然の変化や脅威に対応する過程で作られたもの

地球や人々にとって本当にいい社会を目指すにおいて注目すべきなのは、ブータンが最初に取り組んだ経済以外の要因を含んだGNH(国内総幸福量)の導入です。

実際にお金の使い方を変えるだけでその日全体の幸福感が変わるという結果が出ており、例えばグーグルは傑出した管理職にお金ではなくグーグルの経営幹部たちとの旅を報酬として与えたところ、お金を与えるよりはるかに大きい影響力が組織全体に与えられたといいます。

現在の資本主義には商品を安くすることで労働力が安くなり、労働力が安くなるとさらに商品が安くなる無限の連鎖が続き、結果的に商品も労働力も質が悪くなるという悪循環が生まれていますが、そもそも自分たちが貧困であれば環境のために活動しようなんて気持ちは生まれず、経済と環境の両立が求められる今日において、働く人々の福祉を高めることを一国の繁栄を測る際の指標にしていかなければ、環境のために何かをしようと言う人は、本当に一部の余裕のある人に限られてしまうことになってしまうでしょう。

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↑自分の生活や仕事に満足していない人が、環境のために何かをしようなんて思うはずがない

近年、どんな人材も引き抜き放題だといわれていたアップルから多くの社員がイーロン・マスク率いるテスラモーターズへ引き抜かれており、その数は総勢150名以上にもなるそうです。

アップルからテスラへ移籍を決断する理由の多くにはマスクの存在が大きく、かつてアップルの商品開発担当副社長であったダグ・フィールドは、アップルでの仕事環境には十分満足でアップルを辞めることなど考えてもみませんでしたが、マスクの呼びかけに迷うことなく応じ、あっさりとアップルを辞めてしまいました。

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↑「世界最高の自動車を開発する」テスラの目標はアップルの社員をも魅了する

マスクは地球温暖化の解決策を本気で考え、エンジンを使わない100パーセント エレクトリックの自動車を完成させましたが、これは輸入原油に膨大な資産が使われていたアメリカにとって問題解決の大きな一歩となり、2010年にテスラが上場を果たした際には多くの投資家にテスラの未来に賭けることを決意させました。

テスラは家庭用ソーラー蓄電池の開発も手掛けており、マスクは経済と環境の両立を目指すには企業活動に炭素税を導入して再生可能エネルギーへ転換することが必要だと考え次のように述べています。

「今の化石燃料の価格水準は、間違った行動を奨励しているようなものだ。果物や野菜に高い税率を課し、タバコや酒に低い税率を課すとしたら、筋が通らないだろう。しかしエネルギーに関してはその問題が起きている。」

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↑環境問題を含め、もう世の中の決定的な問題を解決する企業しか、人もお金も集められない

今後、遅かれ早かれ、すべての企業が利益だけを重視した経済システムから環境を配慮した新しい経済システムへとシフトチェンジを余儀なくさせることになるでしょう。

震災後の海は生物が育つ条件を十分に保つという調査結果や、実際に1960年のチリ地震津波の後にはカキの成長が倍になり今でも平年の倍ぐらいのスピードで生き物が育っていることをふまえると、東日本大震災後の今こそ自然サイクルが変わる時代の大きな転換点だと考えられ、ビル・ゲイツはこれからの世の中について次のような展望を語っています。

「だれもがそれぞれの役割を果たせば、世界は着実によくなっていくだろう。そして50年後にふり返ったとき、何億人もの命を救ってきたと言うことができるだろう。今世紀が平和の世紀だったと胸を張って言える日が、きっと来るだろう。」

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↑大きな災害の後こそ、自然のシステムが大きく変かわる転換期

利益重視で企業が生み出したガラクタはお金では変えられない地球の資源を奪いましたが、地球支援は慈善活動ではなくビジネスに必要な支出と考える企業が少しずつ成功し始めており、この流れに乗り遅れることこそが企業にとって大きなダメージです。

日本は東日本大震災を経験したことで自然の脅威を改めて知り、これ以上今のままの経済システムを続けていては地球がもたないというメッセージを感じたはずで、生命に対する慈しみや正義を求める人間の倫理観を活かした企業活動にシフトすることが早急に必要とされているのではないでしょうか。

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