Good Life Journal

日常生活における「疑問?」を「確信!」へ

寿命100年人生の回り道「好きでやっていることが楽しくないという時期が続いたら、一旦休んだ方がいい。」

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国連の推計によれば、2050年までに日本の100歳以上の人口は100万人を突破する見込みです。

ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏によれば、これからの日本人は人生を100年以上で考える必要があり、これまでの週休2日制や「教育→就職→引退」といった一斉行進の時代とはまったく違う、新しい時間の概念が誕生し、あらゆる世代にとって選択肢を持っておくことが重要になるため、結婚や就職など人生の道筋を確定するような決断を先送りにする考え方が主流になると考えられます。

現在の日本では20歳が成人年齢だとされていますが、これは平均寿命が50歳にも満たなかったであろう明治時代に決められた考え方で、これから100歳以上生きる私たちの時代では成人年齢を40歳として考え、20歳から40歳の間を大人になるためのプロセス期間として考えてもよいのではないでしょうか。

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↑21世紀は40歳でやっと大人になる

今日の余暇時間や時間に関する考え方の多くは、労働時間が画一化されていた産業革命期に形成されたもので、また、日本人が会社人間になったのもここ最近のことであり、年功序列や終身雇用といった日本の代表格的なシステムは戦時中に作られた体制の産物です。

今の18歳から30歳の若者が結婚や子作り、自動車や住宅の購入をどんどん先送りにして選択肢を残そうとしはじめ、特に女性が結婚や出産の時期を遅らせていることも考えると、旧来の時間の組み立て方や社会システムは、これから100年ライフを送る日本人には適しておらず、長い人生においてキャリアの中断や転身、昔は時間がかかって難しいと思われていたことにチャレンジしようとする人が今後、増えていくでしょう。

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↑100年ライフでは今まで20代、30代でやらなければならなかっとことを先送りできる

日本全国を回り、日本の伝統文化を世界に広める活動をしている元サッカー日本代表の中田英寿氏は、29歳という若さで惜しまれながらサッカーを辞めたことに対して次のように述べています。

「自分がサッカーをやってて、好きでやってるわけじゃないですか。その好きの部分が楽しめなくて、ずっと時期も長く続いてて、だったら一旦休んだほうがいい。」

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↑100年ライフでは回り道する余裕はたっぷりある

ベストセラー作家のマルコム・グッドウェルはどんな分野でも1万時間の練習をこなせば、その分野でプロと呼ばれる存在になれるという「1万時間の法則」の考え方を提唱しています。

リクルート出身で現在は高校の校長をしている藤原和博氏は、20代に一つ目の分野に1万時間、30代に二つ目の分野に1万時間、そして、40代に三つ目の分野に1万時間を費やすことで、まだ世の中に存在しない新しい仕事を作り出せると述べていますが、1万時間というとてつもない時間は、本格的な就職、結婚、そして子育てなど従来の考え方よりも少し遅らせる余裕があるからこそ、できるものなのではないでしょうか。

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↑仕事、趣味、結婚、そして子育てとすべてのことを20代、30代で行うのは現実的ではない

欧米と比較すると日本は長期休暇をあまりとらず、企業戦士として勤勉に働くことはよく知られている話ですが、江戸時代の日本はものを考える時間軸が今よりもっと長く、徳川家康は三代かけて利根川の治水をし、津軽の人たちも海岸に防砂林を作るのに三代かけていました。

もともと自然界の生物には「ゆとり」とも呼べる融通性がDNAの中に組み込まれており、例えば冬眠をして春に備えたり死んだふりをして生き残るなど、弱肉強食の自然界に生きる生物でさえ競争することを一旦中断し、待つことで進化してきたのです。

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↑冬眠はエネルギーをためるために機が熟すまで活動を先送りするという生きる知恵

アテネと北京の両オリンピックで平泳ぎ100Mと200Mの2種目2大会連続金メダルを達成した元競泳選手である北島康介氏は、2連覇のかかった北京オリンピック100M準決勝の際、思わぬライバルが現れたことで力んで泳ぎが硬くなり、その結果、予選に比べてタイムを落とし、ライバル選手に大きな記録の差をつけられてしまいました。

そんな北島氏を支えていたコーチの平井伯昌氏は、決勝本番前の練習で北島氏を大きくゆったりしたテンポとペースの速いテンポで泳がせることで、たとえ大きく泳いだとしてもスピードが落ちないことを確認させ、本番直前には「勇気を持って、ゆっくり行け」と一言だけ伝えたそうで、その言葉を聞き入れた北島氏は決勝で58秒91という当時の世界新記録を打ち出すことができたのです。

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↑「勇気を持って、ゆっくり行け」

私たちは現在、コンピュータがナノセカンド(10億分の1秒)単位で時間を計る世界に生きています。

このような急速なペースに押される生活では多くの人が性急すぎる判断をしていますが、臨床心理学者で京都大学名誉教授の河合隼雄氏は、人間は早く安心するために「わかった」と思いたがる傾向があるとして次のように述べます。

「学問にしろ、芸術にしろ、大きい仕事をした人は、一般の人々が『わかった』と思っていることに対して、『果たしてそうだろうか』と疑問を感じ、簡単にわかろうとする誘惑に耐え、『わからない』ことに時間をかけて取り組んだ人たちである。」

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↑偉大な功績を残した人とはみんなが「わかった」ことに対して常に「わからない」を長い時間問いかけた人

アントニオ・ガウディは、サグラダ・ファミリアがいつ完成するのかという質問に対して専ら「神はお急ぎになりません」と名言しました。

ガウディが主任建築家となった頃、建設は財源枯渇の問題で必然的にゆっくりと進めるしか術がなく、その間にガウディは重力に対して理想的な建物や柱のフォルムを知る実験を10年の歳月をかけて行ったり、キリスト教の精神を深く勉強して一つの宗派を立ち上げてもいいほど崇高な人間に変化するなど、長い歳月がガウディを精神的にも技術的にも変革させ、サグラダ・ファミリアの威厳や壮大さはそうしたガウディの成長をすべて吸収しているのです。

ガウディは「ゴシック建築の完成者であり、ギリシア建築の完成者でもある」と言われており、これらの完成はガウディがいなければ何百年かかっても誰も成し遂げることはできなかったことで、何十年にも及ぶ緻密な実験、観察、記録の繰り返しが結果的に建築史において跳ぶような前進を生み出したと考えられます。

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↑ガウディ「この聖堂は亀のようにゆっくりとでも、休まずにつくり続けていこう」

「急いで成長すると、そこからの人生は余生になってしまう」とはマイクロソフト日本法人元代表取締役である成毛眞氏の考えです。

余生とは老後の人生を指す言葉で、おしなべて仕事の飲み込みが早く、そこそこ出来る人というのは仕事面で成長しきっているため、これから先に良い方向へ変わる余地が残されておらず、その姿はまるで余生のように老け込んだ人生を過ごしているように見え、成長の余地を設ける必要があるのだと言います。

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↑成長の余地を残しておくのも、人生の贅沢の一つ

芥川賞作家の松本清張氏は電気会社の給仕や印刷所見習い、そして、朝日新聞社での仕事など様々な職を経験し、43歳という遅い作家スタートであったにもかかわらず40年間の作家活動で書いた作品は長編短編含めて1000編にも及びました。

文壇では「清張以後」という言葉ができたほどの影響力の大きさで、世にでるまでの期間が長かったからこそ、その間にじっくりと自分の力で成熟することができたのであり、清張氏は「巨匠とはなんぞや」という問いに対し次のように述べています。

「歳をとって、よく人間が枯れるなどといい、それが尊いようにいわれるが、私はそういう道はとらない。それは間違っているとさえ思う。あくまでも貪欲にして自由に、そして奔放に、この世をむさぼって生きていたい。仕事をする以外に私の枯れようなんてないんだな。」

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↑むしろ枯れていくのは、急ぎ過ぎた人たちだろう

一流のプロ野球選手は約144キロで投げられたボールに対して、たとえ200ミリ秒ほどの時間で判断しなければならなくても、いつ、どこで、どのように打つべきかを判断する時間をギリギリ間に合うまで引き延ばしており、この状態のアスリートは禅の修行によって「時間から解き放たれている状態」と似ています。

年を重ねるごとにスイングスピードが上がっているメジャーリーガーのイチロー選手によると、最短距離でバットを振るのではなく敢えてグリップを後ろに残してギリギリで打つことでボールに対応できるゾーンの可能性は広がり、またグリップを後ろに残すのは最後の最後までファールにしてもう一球チャンスを生むためなのだそうで、すぐにボールに飛びつくのではなく、時間をとって選択肢を検討する積み重ねがイチロー選手を7つのギネス世界記録保持者へと成長させたのかもしれません。

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↑現在は、平均年齢が50歳の時代からは考えられないほど、贅沢な時代

東京都墨田区の最高齢者で現在113歳にして画家として活躍する後藤はつのさんは、73歳で初めて絵を描きはじめ、99歳までの約20年もの間、1年に1枚から2枚のペースで100号の大作を描き続けた結果、96歳で現代童画展文部大臣賞を受賞しました。

今でも一層活躍している後藤さんは「何かを始めるのに、もう歳だから、もう遅いなんてことはない」と信じて自分の未知なる可能性に挑戦し続けています。

これからの日本は世界に先駆けて長寿社会へと変化し、多くの国にとってモデルケースとなりますが、寿命が延びたことで増えた時間の一部を、大人への成長プロセスを長くするために費やすのは合理的な対応だと考えられます。

70歳から80歳以上の人が活躍することは珍しくなくなる社会では、これまでの「老いている」「若い」という概念は変わり、誰もが生涯に多くのステージを経験するようになるでしょう。

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↑世界で最も早く長寿社会に突入する日本から100年ライフの見本を作らなければいけない

今の世の中は高出世や高所得を目指す人にとってキャリアを中断することや長期の休みをとること、そしてフリーランスのような柔軟な働き方をするのは得策ではありません。しかし、今の社会システムのまま100年ライフを迎えると働かなければならない期間はとてつもなく長くなり、そんな人生は窮屈に感じるのではないでしょうか。

「大学を卒業したら就職する」とか「結婚したら家を買う」といった「ああすれば、こうなる」ですべてがスピードをもって決定づけられる人生は生きていても面白くなくなり、年齢に関係なく旅をしたり、大学でもう一度勉強する期間を人生に組み込むなど、100年ライフに合わせた新しい柔軟な時間の構成を、社会だけでなく私たち一人ひとりが主体となって考えていく必要があるのだと思います。

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