Good Life Journal

日常生活における「疑問?」を「確信!」へ

サンゴと地球の寿命は比例する「地球の寿命は長くて230年、短かければ70年。」

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中国ではすでに国土の2割が砂漠となってしまいましたが、先進国の人々は命を脅かされるものとして、テロやミサイルのような一部の人の命を奪うリスクのほうに気をとられてしまい、砂漠化といったこれから確実に多くの人の命を奪っていくものを見過ごしがちです。

アメリカ政治に欠かせない存在となっていると言われるシンクタンクに、ヘリテージ財団というのがありますが、その財団のサイトで「砂漠」と検索してヒットするのは3件にすぎないのに、「ミサイル」というキーワードで検索すると2966件もの検索結果が表示されたという結果にも、人々の砂漠への関心の低さが現れているようです。

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↑人は砂漠化よりもミサイルの破壊力に数千倍の関心を持つ

2006年の美術品オークションで約1億円の値をつけた木のテーブルの作者、木工職人のジョージ・ナカシマは、アメリカで生まれ育ちながら「ニューヨークが大嫌いだ。あんなものあってもしょうがないものだ」と語り、都市の文明はすでに行き詰まりが来ていると指摘しました。

そして、森林なしでは人は生きることができないのだと次のように語っています。

「毎年多くの森林地帯で木が伐り倒され、その中のいくつかは元のような森林に育ってはいかない。英国人が伐採したインドの東海岸地区を、考えてみるがいい。結局、大地は砂漠と化してしまった。」

インドだけではなく、バングラディシュやミャンマー、そしてアフリカなどでも、砂漠のように驚くほど弱い地面が確実に増えており、大雨やハリケーンのたびに起こる洪水に土砂崩れ、そして地すべりといった耳慣れない災害も、森林が見境なく破壊されたことによって起こる現象なのです。

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↑地面というのは、草木がなければ流されるもの

日本の土壌においても、地質学者の藤田和夫氏がその著書で、「日本列島はもろい砂山である」と言うくらいに弱いのが本来の姿で、その砂山を支えていた森林を壊したために地面が削られている地方が増えており、そのもっとも顕著な場所が沖縄です。

沖縄は日本に復帰したことをきっかけに、沖縄を「本土並み」にしようと目指した政府の莫大な補助金によって高速道路や上下水道などが整備され、今となっては人口10万人当たりのホテル件数で沖縄は日本一、那覇市は渋滞時のスピードの遅さでも日本一となるほど都市化が進みました。

5人に1人が土木に携わるという宮古島など、沖縄では土木建築産業が主産業となっていくと同時に、さまざまな魚介類がひしめき合い、島の人々から「銭蔵」と呼ばれていたサンゴ礁の海が「死の海」へと変わっていき、旧与那城町の議員であった花城清繁氏は次のように言ったそうです。

「どの沖縄戦でも、海だけは破壊されずに残った。ところが日本復帰を境に、その海までがどんどん壊されていった。」

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↑戦争でも生き残った海が、土木工事によって死んでいく

白骨のようになっていくサンゴの様子を毎日海に通って定点観測し、新聞社への投書を続けた吉嶺全二氏は、著書「沖縄 海は泣いている」の中で、沖縄のサンゴ礁の海は本来あるべき姿の99パーセントが失われてしまったと述べました。

その原因は、埋め立てやオニヒトデなどによって直接的にサンゴが壊されることなどよりも、陸の土木工事によって自然が一気にコンクリートに変わってしまったことで間接的に壊されることのほうが比べ物にならないほど深刻のようです。

「光を食べる動物」と言われるサンゴは、数メートル先まで見渡せるような高い透明度のある海でないと生きていけません。しかし、蛇行する川や農地のため池を通らなくなった雨水が、削り取った表土と一緒に排水溝から一気に海に流れ出る仕組みになったがために、海は濁り、土がサンゴに覆いかぶさるようになって、逃げることのできないサンゴはほぼ壊滅状態に陥りました。

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↑沖縄の海は雨が降るたびに赤土色に染まる

世界を見ても、サンゴは海水魚の三分の一以上の種の住処となっているだけではなく、アマゾンに匹敵する量の酸素を作っているともいうのに、世界に健全なサンゴはもう30パーセントしか残っていないそうです。

東京湾の生き物や魚の顔面写真などを撮るユニークな水中カメラマンとして知られる中村征夫氏は、今後30~50年には世界中からサンゴ礁が消えると予測している知り合いの学者から、サンゴが壊滅した場合の地球の寿命は長ければ230年、短ければ70年というほど深刻だと聞いたと言います。

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↑サンゴが壊滅すれば、地球の寿命は確実に縮まる

中村氏は、大きなサンゴは山の木々そのもの、サンゴに戯れる小魚は、スズメや小鳥のように楽しげに泳いでいると例えましたが、今後の海の景色は、どんどん森が失われている陸の景色とリンクするようになるかもしれません。

生き物が消えているのはサンゴ礁の海だけではなく、今、北海道や日本海側などの日本の沿岸域にはおよそ1,000キロにわたって魚介類も海草も育たない不毛の砂漠が広がっています。50年位前から見られるようになったこうした砂漠は、山に豊かな森がなくなったことが大きな原因なのだそうです。

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↑陸よりも一足先に砂漠になっていく海

4人に1人がスギ花粉症を罹っている日本では、森林の4本に1本は杉だというほど、人の手で同じ種類の木ばかり植林された人工林が多くなっていて、自然と受け継がれてきた生態系をなくしてしまった森林は、なかなか自分の力で健康な状態を保つことができなくなりました。

大量に木が伐採された終戦直後の日本の山は、増える木材需要を満たすべく植林が余儀なくされ、真っ直ぐ伸びて使いやすい針葉樹の植林が国から奨励されたのを機に、林業者はこぞって杉やヒノキの山を作ったのだそうで、当時植林をしていたある老人はその頃の心境を次のように振り返っています。

「収穫するつもりなんざ、はなっからなかったさ。植えりゃあ、補助金が出たでな。最初っから、補助金目当てで、あとはほったらかしにすりゃあ、ええと思っとった。」

事実、外国産の輸入木材が安くなったことで、山には山奥にまでびっしりと植林された針葉樹で満員電車のようになっている森が残されたのです。

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↑「線香」のような針葉樹がびっしりと植わる森

過密状態の森では、太陽の光が地面に届かないために草が生えないことや、1本1本が大きな木に育たないため木の根が深く張られないことによって、土壌は固くなり、土壌に浸み込みにくくなった雨水は地面を走り、土を削っていきます。

すると今度は川の姿が一変し、多くの川は雨が降るたびに地表を削って土砂を大量に海へと押し出す濁流となり、雨の降らないときには枯れてしまい、「最後の清流」といわれる四国の大河、四万十川でさえも濁るようになったそうです。

川から海に流れ込む泥が海にたどり着くと海草に付着し、光合成ができずに生きていけなくなった海草は、沖縄のサンゴと同じように激減し、沿岸の海は砂漠となって魚介類は姿を消していきました。

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↑1950年頃と比べると多くの川の水深は10分の1にまで減った

自然の海岸が残る地域は約2割という瀬戸内海ですが、原発反対のデモが35年以上も続けられて自然が守られてきた祝島では、周辺の海辺が絶滅の危機にある生物たちの宝庫となっています。

祝島にほど近いところにある田ノ浦湾は、雨を蓄えた山の地下水が常に海岸から湧き出しており、海草が森のように茂っているのだそうで、反原発デモをしている男性も、「山を伐ったら海岸が壊れる。海草がないと魚は育たん。そんなの常識よ。」と言いました。

祝島に限らず、昔は日本のあちこちで、海から見える森を漁師たちは「魚つき林」と呼び、海に豊かさを与えてくれる存在として崇めていて、江戸時代には魚つき林の木を1本でも切れば、首が飛ぶと言われるまでに厳しく管理されていたこともあったそうです。

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↑森がなければ魚が育たないのは当たり前

「森は海の恋人」というスローガンを掲げ、山への感謝と森の大切さを地元民に広めているのは宮城県の気仙沼湾でカキ養殖をしている、発起人の畠山重篤氏は、地下水の豊かな川が海に注ぎ込む海と、そうでない海とでは、植物プランクトンの発生が30倍から100倍も違うのだと述べています。

餌を与えているわけでもないのに牡蠣が育つのは、大川から流れ込む鉄分などのミネラル豊富な地下水のおかげで、大川がなかったら気仙沼湾の生物の生産は90パーセント減るという研究結果もあり、この川の水は遠い外海にも水深20メートルの深さのところまでも生物に必要な養分を供給していることがわかっているそうです。

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↑森の地下水は海の生き物の生命線

森を再生する運動が1950年代から続けられている北海道の襟裳岬では、2007年には約95パーセントの森林が蘇り、魚介類が帰ってきて、約100トンだった海産物の水揚高が約1700トンヘと伸びました。

それでも、森の10年は人間の時間軸で言うと1歳というくらい成長がゆっくりしているので、襟裳岬の森はまだ6歳程度でしかなく、昔のような豊かな森になるまでにはまだ数百年という時間が必要だといわれているそうです。

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↑生まれて60年の森は6歳にすぎない、安定するまでに必要な時間はあと数百年

森に手を入れる工程は60年で一区切りというように計画されるそうですが、人の交替があったりして当初の計画がどこかに行ってしまうのは毎度のことで、「60年を目処にした施業などつづいた試しがない」として苫小牧の森と向き合ってきた北海道大学の石城謙吉教授は、次のように述べています。

「僕は一人の学者が、いや一人の人間が生涯に関わることのできる森林は一つしかないと思っているのです。女性と同じですよ。」

映画化されてアカデミー賞を受賞した「木を植えた男」という小説でも、砂漠化して廃墟となったフランスの山岳地帯に、ある一人の男がドングリを毎日100個、3年間で10万個植えるところから森を再生させ、一生涯をかけて森を作り続けました。

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↑森は一生をかけて向き合っていくもの

前出の水中カメラマンの中村氏は、「環境保護のために何かしたいが、どうして良いかわからない」という意見があるけれど、とにかく人が家の中にいては駄目なのだとして次のように述べています。

「近所の自然にしょっちゅう出かけてみようよと僕は言うんです。それによって初めて、あれ、この前よりごみが増えたよとか、変なものが流れてきているよとか。水がきれいだったのが泥水になったけどどうして、何で、って。」

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↑人が近所の自然と親しくなれば、世界の環境が守られる

沖縄のサンゴ礁の再生に取り組む金城浩二氏は、沖縄出身の歌手Coccoとの対談の中で、サンゴの再生は個人の価値観で始めたことで最初から目的があるものではなかったと、次のように語りました。

「最初は遊びだったくらいで、夢中になれるからやっていて、やるからにはと勉強していたら価値とか、問題が見えるようになってきて。(サンゴを)残すためにっていう目的に今はなっているよね。」

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↑島にとって本当に大事なものが見えるのは、島の人だけ

サンゴが生まれ育つのを見ることができる金城氏を「うらやましい」と言うCoccoは、具体的な結果を出せない自分の無力さへの怒りをエネルギー源にして歌ってきたのだそうで、「『Cocco・沖縄県出身』これ以下に続くプロフィールがどのように綴られようと、実のところはどうでもいい気がする」と述べています。

祝島の反原発デモでは「海を売るんか」「電力会社の銭をあてにするな」といった罵声が飛ぶと言いますし、人は本来、自分につながるひとつの自然を守ろうとする、とても一途な生き物なのではないでしょうか。

土を踏むことなく毎日を過ごすような都会暮らしでも、通勤で渡る橋の川やビルの間の神社の林でもいいから、自分にとってのひとつの自然を誰よりも知っていると言えるようになれば、ミサイルよりも恐ろしいものが見えてくるかもしれません。

木の仕事 (住まい学大系)

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木のこころ―木匠回想記 (SD選書 (178))

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