Good Life Journal

日常生活における「疑問?」を「確信!」へ

なぜ、宇宙に行ったことがない人が、現実に限りなく近い「宇宙兄弟」を書けるのか。

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日本の多くの中学高校では英語や数学など大学入試に必要だと思われる科目を主要科目、そうではない美術や音楽やスポーツを副科目とし、正解を求めて点数を稼ぐといった数値化に重きをおいた教育を行っています。

大学においては東京大学などの一部の大学を除いて、例えば弁護士になりたい人はまずは法学部に入って一生懸命勉強するというように、その分野を深く学んでいくのが一般的なスタイルで、日本自体が学校に対してすぐに役立つような学問を求める傾向にあるのでしょう。

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↑正解がない世の中に、正解を求める教育が果たして楽しいのか

地動説を唱えたコペルニクスは最初から天文学者だったわけではなく、もともとは神学が主な専攻分野で、合わせて数学や天文学を学んだ後、法学や医学でも博士学位を取得しており、レドナルド・ダ・ヴィンチは芸術だけでなく建築や科学にも造詣が深かったなど、複数の学問に壁を作らなかった集大成が大きな創造や発見につながったと考えられます。

タモリさんは日本画や水墨画を愛し、ジャズや落語、講談、浪花節、そして九州という土地柄、受信できていた北京放送や米軍放送など、学校ではなかなか習わないジャンルのものを好んで聴いていました。

このことは、後に独自の四ヶ国語麻雀や、川や風などが発する自然の音までもそっくり声で表現するという技に影響したと考えられ、タモリさん自身は次のように述べています。

「我々のテレビ番組に対してもすぐ『低俗だ』『バカバカしい』『下品だ』と決めつけるのは、知性のない証拠。バカなものにある、開放的というか、日常からはみ出た突飛性という得体のしれない力を楽しむ、これは知性がなければできない。どんなものでも面白がり、どんなものでも楽しめる、これには知性が絶対必要。」

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↑ダ・ヴィンチが描いたウィトルウィウス的人体図の美しさの秘密は、自然の英知を数学的に取り入れた所にある

池上彰さんは理科系の偏差値エリートが大勢集まる東京工業大学で、将来、技術の分野で日本を引っ張る存在になるであろう学生たちにとって、日本と世界の歴史を学ぶことは社会において技術が果たしてきた役割や、その重さを知ることにつながるため、無駄な勉強ではないのだと現代史を教えているそうです。

同じように無駄だと思われがちな漫画には先見の明が科学よりも先に描かれていることがあり、例えば「宇宙兄弟」ではJAXA(宇宙航空研究開発機構)の取材協力なんて全くない、ましてや宇宙飛行士の経験もなく、自分で集めた資料を用いた想像力だけで宇宙飛行士の物語が描かれており、その世界観には専門家をも「いつかこうなります」と言わしめるほどの未来を作る知恵が詰まっています。

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↑手塚治虫の漫画「火の鳥」では未来の世界の通貨の名称を10万クレジットと表し、お金とは信用だということを漫画を通して伝えていた

イーロン・マスクはかつて遊びだと思われていたSFに夢中になり、実際にSFの世界に描かれていた電気自動車を実現しており、漫画やSFなど「そんなの読んでないで勉強しなさい」と言われるような、将来役に立つとは思えない分野の知識で、最先端の科学技術を生み出すことは可能なのです。

日本には理系は儲かって文系は儲からないという通念が蔓延していますが、儲かるかどうかだけですべてが決まっていく社会からイノベーションは決して生まれません。

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↑マーク・ザッカーバーグの愛読書は「エンダーのゲーム」、今の時代を作っているのはSFを読みふけっていた人

東日本大震災での原発事故以降、「放射線」「ベクレル」「シーベルト」といった言葉がたくさん出てきて、テレビで大学の教授や専門家が説明をしてくれても、一体何を喋っているのか意味がわからないと思った人は多いはずです。

スティーブ・ジョブズのアップルやアインシュタインの相対性理論も然り、一見どんなに創造性や独創性があるように見えても、最終的には誰にでも理解できる当たり前のことをやるというのが本当の創造性や独創性なのでしょう。

彼らのように時代を切り開くには非常に視野の狭い専門性だけに偏るよりも、幅広い知性や教養が必要だと考えられ、古典文学から物理関係の書籍、漫画、そして詩集などあらゆるジャンルの本を読む宇多田ヒカルは次のように述べています。

「天才とか凡人とかって......そんな分けるものじゃないと思う。すごく頭がいいとか、すごい才能がある人こそ、その自分の中の万人の共感するものをわかっていたり......すごく普通の人間の感覚があると思うのね。」

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↑誰も理解できない非常識なことをするのは創造性や独創性ではなく、ただの迷惑

メディアでよく「必ず幸せになれる20のこと」「こうすれば病気にならない」という情報を目にします。

しかし、「ああすれば、こうなる」ですべてが解決するのであれば、世の中に起こっている問題は解決しているはずで、このような思考になるのは教育や社会においてお金や仕事に直結するであろう手っ取り早いことばかりを優先し、美術や音楽といった数字で測ることのできない分野をないがしろにして、想像力や感性を磨いてこなかったからです。

最近の映画や音楽には泣かせないものには価値がないという風潮があり、映画のCMでも「泣きました」「感動しました」という画一的な感想ばかりが巷に溢れているとして、北野武は次のように述べています。

「オレは、自分の映画を、どういうふうに解釈してもらってもかまわないと思っているけど、ただひたすら『泣きました』『感動しました』っていうだけの反応なら、そいつらの頭は思考停止状態とたいして変わらないなと思うんだよね。」

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↑「パッと並んでパッと観てパッと食べて終わり」食事も映画もすべてが手取り早い方向へと進む日本

オリンピックの実況中継で「感動をありがとう」という言葉をよく耳にしますが、日本人はモノを見るときはとにかく「感動させて欲しい」という気持ちが強く、ただ感動するためだけにお金を払って映画館や美術館に足を運ぶのは、怒りや笑いや美しさといったいろんな感覚を初めから無視しています。

例えば、屋外の手すりを金属製にするというのも、もし誰かが日の当たっている時に触れば火傷をするかもしれないという感覚を想像できておらず、手っ取り早く機能性や便利さばかりを追い求めた結果なのです。私たちが生活から失いつつあるのはまさにこの感覚そのものです。

言葉で表現することのできない感覚を哲学で「クオリア」と呼び、例えば音楽から得られる能力とは言葉にならないクオリアである感受性や感覚だと考えられます。

金属製の日の当たった手すりを触ると「熱い」といった感覚は自分と対象との距離感を測るためのメジャーのような役割を果たしており、教育や日常生活から音楽が失われるというのは、人間から人の痛みや悲しみを想像したり共感する力さえも奪ってしまっています。

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↑効率で便利さばかりを追い求めた結果、失ったのは悲しい、嬉しい、美しいといった感覚

ニューヨーク市立大学大学院センター教授のキャシー・デビッドソンは、「2011年にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65パーセントは、大学卒業時に、いまは存在していない職業に就く」と述べています。

遺伝子やDNAの研究に携わる人の中には、DNAが形づくる二重螺旋の精緻な美しさを目にすると、論理を超えた神のような存在を想像したくなるそうです。

アインシュタインが自身の思考法について問われた時に「私は100パーセント、イメージによって考えます」と答えている通り、論理や合理だけで人間の問題をすべて解決できるわけではなく、想像力や非科学的なものが人類の進歩には不可欠なのです。

科学によって生命のコピーは作れても、生命のオリジナルを生み出すことはできず、例えば生命である人間の様々な思考や心理模様が織り交ぜられている哲学を学ぶことは、すぐには成果がでないかもしれませんが、長い目でみた時に常識や既成概念を突き破って新しいものを生み出すことにつながるのでしょう。

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↑DNAの美しさを目にすると人間の力を超えた何かが在るとしか思えない

マサチューセッツ工科大学では最先端の科学技術は4年ほどで陳腐化すると考え、それよりも音楽の授業を充実させています。

音楽を学ぶことは物事から何かを感じとる術を蓄積することで、その蓄積は将来的に自分を支える基盤になり、たとえ新しいものが出てきたとしても、基盤さえあれば新しいものすら吸収して、自分の頭で物事を深く考る人間になることができるでしょう。

損得ばっかりに振り回されている想像力のない人間は、犬や猫以下だとして所ジョージは次のように述べています。

「そういう想像力のない人生はもったいないですよ。せっかく人間として生まれてきてるのに、人間特有の想像力を鍛えずに、ただ服を着て、食事して、暑さ寒さをしのいで生きていれば人間だなんて、なんかちょっと違いますよ。」

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↑音楽が与えてくれるのは偏差値ではなく物事から何かを感じとる感性

2015年の日本の15歳から39歳の死因第一位は自殺で、合計6,383人が若くして自ら命を絶っており、また地震や原発事故、そして国民同士の格差など様々な問題が生まれていますが、なんだか日本全体がこれまで豊かさをもたらしていた結果を安定させて、効率良くお金が儲けられるシステムに対してアレルギーを起こしているように感じられます。

これからは単眼ではなく複眼で物事を捉え、効率主義に非効率な余裕や遊びをもプラスした、全体のバランスと質を重視する価値観を大切にするべきであり、そろそろ今起こっている問題を真正面から受け止める必要があるのではないでしょうか。

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↑これまでの金儲け第一主義のシステムでは日本を支えることはできない

テクノロジーと曖昧で感性的なもののバランスを重んじることで私たちの生活の概念を変えたジョブズは次のように述べています。

「文系と理系の交差点、人文科学と自然科学の交差点という話をポラロイド社のエドウィン・ランドがしてるんだけど、この『交差点』が僕は好きだ。魔法のようなところがあるんだよね。」

「イノベーションを生み出す人ならたくさんいるし、それが僕の仕事人生を象徴するものでもない。アップルが世間の人たちと心を通わせられるのは、僕らのイノベーションはその底に人文科学が脈打っているからだ。すごいアーティストとすごいエンジニアはよく似ていると思う。」

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↑「すごいアーティストとすごいエンジニアはよく似ている」文系と理系の間はイノベーションを生み出す魔法のような交差点

かつて地動説を唱えたガリレオ・ガリレイやコペルニクス、そして遺伝の法則を発見したメンデルは敬虔なクリスチャンでもあったそうで、今は水と油のように混じり合わないものと考えられがちな科学と信仰は、ともに生命や宇宙の真理を解き明かしたいという点では昔からずっと共通しているのです。

頭脳も精神も私たちの身体の一部であり、それらを個々に分離することなど、もともと不可能で、人間とは論理的で機械的なものだけでなく、自然や生命、感性や感覚といった曖昧なものとのバランスが取れてこそ、幸せを見出せるのだと思います。

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