Good Life Journal

日常生活における「疑問?」を「確信!」へ

呼吸と同じ。お金も経験も吐き出さなければ、新しいものは何も入ってこない。

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アメリカの紙幣に「In God We Trust」と印刷されているように、今の社会で“神”に代わって信用を保証しているものが、“お金”なのだそうです。

「お金でなんでも解決できる」など、できるだけたくさんのお金を味方につけたものが勝ちだという考えは常識のようになっていて、実際、「北の国から」の監督として知られる倉本聰さんが渋谷の若者に、「今、生活に欠かせないもの」を聞いたところ、1位はやはりお金でした。

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↑なくては生きていけないものとして真っ先に思い浮かぶのは、食料でも火でもなく、お金である

なにかというと経済活性化が叫ばれますが、働く人を苦しめてまで経済活動をするブラック企業のニュースを聞かない日はありませんし、昨今、ベトナムなど海外から日本にやってくる多くの実習生たちまで、日本で働くことに苦しめられているのだそうです。

ジャーナリストの出井康博さんの著書「ルポ ニッポン絶望工場」では、外国人労働者が「実習者」としてやって来たにも関わらず、技術を学べないままに3年で帰国させられたり、「留学」ビザでやってくる途上国の若者が、学費を搾取されながら過酷な労働をするようになったりしていることがレポートされています。

そんな日本は、国ぐるみでブラック企業をやっているのと同じだと、出井さんは言いました。

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↑働きにやって来た外国人から日本は、「ブラック国家」と認知されつつある

入れ替わり立ち替わりやってくる外国人労働者が、日本人のやりたがらない介護や工場の仕事をしている一方で、親に大金をかけてもらって大学を卒業した日本人の若者はというと、大卒生の数自体は減っていて就職の間口は広がっているというのに、“大企業”といった、より待遇の良い会社にこだわった末、未就職が珍しくありません。

小説家の水上勉さんは、著書「働くことと生きること」の中で、仕事に就かないで地方の実家に頼る若者が増えている現状を問題視し、次のように指摘しています。

読書をする根気もなく、アルバイトに出ても長つづきせず、結局は手も汚さずに祖先の田畑にたよって生きようとしている。こんな『なまけもの』製造に大学は力を貸したといえぬこともない。

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↑大学は、なまけもの製造所になっている

実際、人々が高学歴化していくのに伴って選挙投票参加率は低くなっていますし、年金はおろか子供の給食費すら払わない大人が増えていて、未納率の高い大阪市においては、滞納されている小中学校の給食費が総額で一億円を超えたそうです。

児童虐待においても、15歳未満の子どもの数は減り続けているというのに虐待の通告数は増加していて、2015年度に通告された数は初めて10万件を上回り、1990年と比べると100倍にもなりました。

そういったことから、今の日本では、「大人の『生きる力』の危うさが社会を覆っている」とも言われています。

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↓お金がほしいと誰かが言う限り、エコノミーは終わらない

現代演劇界で注目されている劇作家の平田オリザさんの著書、「下り坂をそろそろと下る」では、日本の迎えた“成熟”社会とは、人口が少しずつ減ってモノが余るような“成長の止まった”社会だと述べられており、私たちはこれから、長く緩やかな衰退の時間という痛みに耐えなければならないとして、次のように書かれていました。

その痛みに耐えきれずに、 これまで多くの国が、金融操作・投機という麻薬に手を出し、その結果、様々な形のバブルの崩壊を繰り返してきました。この過ちも、もう繰り返してはならない。

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↑緩やか衰退には耐えられず、各国がお金を動かして様々な操作を行う

振り返れば、かつて英語で入ってきた「エコノミー」という単語に、江戸末期の日本人は「経済」という訳語で対応しました。

それまで日本で使われてきた経済は、経世済民(けいせいさいみん)という中国の言葉で、「世を治め、民の苦しみを救う」という意味を持つのだそうです。

「エコノミー=経済」となってから元々日本にあった経済の意味が急速に失われていきましたが、確かに、働くことには罰という意味があって、よくないことなのだと考える西欧と、天照大神をはじめとする神々たちでさえも自ら働いていたという日本では、意味が通じ合わないのも無理ないでしょう。

いまも日本人は、「働く」という言葉には「はたを楽にする」、つまり他者の負担を軽くして、楽にしてあげるという意味を込めることもありますし、経済的な豊かさをお金だけで測る必要はないのかもしれません。

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↑お金をほしいと誰かが言う限り、エコノミーは終わらない

チョークの製造会社である日本理化学工業株式会社では、社員の7割を知的障害者が占めているそうです。

養護学校を卒業して採用された知的障害者たちは、満員電車で出勤し、どうしても言う通りにできない時には「施設に帰すよ」と言われることもありますが、施設にいるより工場に働きに来たがるのだといいます。

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↑満員電車もミスをして怒られる辛さも、働く幸せがあれば大したことないもの

それは社長の大山泰弘さんにとってずっと不思議なことだったのですが、しばらくして大山さんは、彼らがそうまでして働くのは、人の役に立ったり人から必要とされるためなのだとわかるようになりました。というのも、施設の知的障害者はいつも「ありがとう」と言う側であり、彼らが「ありがとう」と言われることは、簡単なことではないからです。

彼らが人に褒められ、役に立ち、必要とされ、幸せになるのだとしたら、健常者中心で知的障害者が“お手伝い”のままではいけないと考えた大山さんは、健常者ではなく、知的障害者の方に軸足をおいた経営をするという決断をしました。

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↓ヒトは「報酬がある」と知るのと引き換えに、親切な気持ちを忘れていく

日本の多くのサラリーマンは定年した途端に働く場を失い、それは“引退”としてポジティブにも捉えられがちですが、「人は何歳になっても、人の役に立ち、人から必要とされる場、“働く幸せ”を求めているはず」と大山さんは語ります。

認知心理学者のマイケル・トマセロ氏も、ヒトが他の生き物と決定的に異なるのは、ヒトは生まれながらに人の役に立とうとする「親切」な心を持っているからだと言いました。

たとえば、役割分担して一つのことをする中で役割をローテーションしたとき、ヒトは1歳半の子どもでもすぐに適応するのですが、チンパンジーの子どもの場合、たとえ人に育てられたのだとしても、自分の役割以外をしようとしません。

つまり、グループで狩りをしている動物も、それぞれ「わたし」モードの個体が集まっているのにすぎないのですが、ヒトは1歳の誕生日の直後から「わたしたち」モードを持つようになり、自分がどのようにすることが期待されているのか考えています。

実際、1歳2ヶ月から1歳半という、まだ社会的にふるまうことを学んでいない幼児は、手がふさがっていてドアを開けられないなど、ちょっとした問題で困っている大人を見ると、初対面であっても、その大人に手を貸して問題を解決しようとするのだそうです。

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↑ヒトに突出している性質は、賢さだけではない。親切さでもある

トマセロ氏によると、幼児のその援助行動は、自分の親からそうするように促されようと促されまいと関係なく行われるのだそうです。

ただし、注目すべきことに、援助されるたびにおもちゃなどの報酬を渡された幼児のグループと、報酬を渡されなかった幼児のグループに対して、もう一度、今度は誰も報酬を与えられないという設定にして、困っている大人を助けてくれるかどうかを観察したところ、はじめの実験で報酬を渡された幼児は、渡されなかった幼児よりも、援助行動をする回数が少ないという結果になりました。

つまり、報酬に目がくらむと、本能的な「親切心」は弱体化することがわかったのです。

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↑報酬を知るほどに、親切心が削られていくのかもしれない

貧しい人々のために資金を携えてやってくる国連や欧米型の支援は、そのお金をどう効率的に使うかということが念頭にあるため、すでに病気で苦しんでいる人の治療に多額のお金をかけるよりも、少ない費用で多くの人を救える予防活動にシフトしていっているそうです。

一方で、無償無給の国際医療ボランティア「ジャパンハート」を組織した医師の吉岡さんは、どれほどたくさんの人を喜ばせることができたとしても、一人でも不幸になる人を生み出してしまったら、それを消すことはできないのだと言います。

そして吉岡さんは、「今の私には、『一人も不幸な人を出したくない』という一念しかない」と述べました。

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↑一人の不幸な人は、他の人の幸せをいくら集めても消えることはない

ジャパンハートに参加する若い医師たちは、はじめは貧しい人を「助ける」つもりだったのが、そのうちに自分が「助けられている」という意識に変わっていくのだそうです。

「ボランティアする側のほうが助けられるってことはよくある」と言い、多くのNGO活動に関わってきた田中優さんは、著書「幸せを届けるボランティア、不幸を招くボランティア 」で次のように述べました。

愛情や条件に恵まれていればそう考えないかもしれないが、普通は誰もが自分がいていい場を探してるんだ。人から「あなたがいてくれてよかった」と言われたい。そう言ってもらえたら、どんなに救われた気持ちになれるだろうかって。

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↑呼吸をするようにお金も経験も出して出して、出し尽くせばいい

実際、“自分がいていい場所”ができるということは、お金やモノでは換えられない価値のあるものなのかもしれません。

マイクロソフトの幹部をやめてネパールの山奥に行き、「ルーム・トゥ・リード」という、本を届けるNPOを立ち上げたジョン・ウッドさんは、活動を通じてこれまでに1000万人の子供に届けることができましたが、自分自身は40歳になっても自宅を買う余裕がなく、払った代償は大きいと言いながらも、次のように語りました。

でも人生に代償はつきものだ。僕くらい自分の仕事を楽しんでいる人は、世界に数えるほどしかいないだろう。月曜日の朝にベッドから飛び起き、オフィスに行くのがうれしくてたまらない人は、そんなに多くない。

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↑「わかっているくせに。きみがいなくてマイクロソフトが困るのは、せいぜい1ヶ月か2ヶ月のこと。」

かつて東洋一の大理石王として知られた矢橋亮吉は、貧しい書生たちを学校に行かせて生活一切を面倒見るとともに、一緒に寮で暮らすなどして、50年の間に百数十名という若者を世話をし、それを楽しんでいたそうです。

矢崎氏は、同じ岐阜県の十六銀行の創業者、渡辺甚吉と並んだ成功者だったことを踏まえて、「お金を稼ぐのが一番うまいのは渡辺さんだが、使うのが一番うまいのは私だ」と言いました。

一生涯、芸妓と耕地を買わなかったという矢崎氏は、人のために動くことの楽しさに勝るものはないと知っていたのかもしれません。

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↑お金を上手く稼ぐよりも、お金を上手く使う方が何倍も難しい

前出の吉岡さんは、新鮮な空気を一番たくさん自分の中に取り入れる方法は「吸うことを忘れること」であり、つまり、吐くことにのみ意識を集中すればいいのだから、お金も時間も経験もセコセコしないで「出して、出して、出し尽くせばいい」と言いました。

ジャパンハートは、無給な上に、食費も飛行機代も全て自腹なのだそうですが、100人を超える若者が集まっているのだそうです。

中身が詰まりすぎて成熟してしまった社会では、自分の持っているもので人のために動く「はた楽」という原点に近づいた人こそ、「生きる力」を得ることができるのではないでしょうか。

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↑呼吸と同じ「お金と経験が溜まったら一旦吐き出せ!」

GDPの高い、経済的に繁栄したお金持ちの国は同時に、遠くの国の資源や人を大量に使い捨ててきた国でもあり、日本も地球規模で考えれば、自分がよければそれでいいというエゴの殻の中にいるアダルトチルドレンなのかもしれないという気がします。

いったん「お金」という言葉を奥にしまって、私たちが人のために動き、“自分がいていい”と感じることだけを見つめていれば、自ずと「生きる力」のある国へも、近づいていけるかもしれません。

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