映画「めぐり逢えたら」の中でトム・ハンクスが演じたサムの親子がシアトルのユニオン湖に浮かべたボートハウスで生活していたように、水上に浮かぶ家での生活に憧れを抱いている人は少なくないのではないでしょうか。
日本でも古くから船屋などのように水上に建てられた家というのは存在しますが、今世界の多くの国々では水上に「浮かぶ」家というのが大きな注目を集めています。
地上828mの世界一高いビルが建設されたことで有名なドバイでは、現地ディベロッパーのKleindienst社が海上2階、水中1階建ての海上住宅「Floating Seahorse」を建設していて、2015年に販売された60戸は販売が始まると即座に完売したそうです。
都市の大部分が海水よりも低い位置に存在するオランダのアムステルダムでは元々ボートハウスの文化が根付いていましたが、水上に居住空間を作る試みというのは発展し続けていて、最近では水上に住宅が作られるようになりました。
日本国内でもハウステンボスが世界初となる移動式水上ホテルの建設を発表していて、今までにない新たな宿泊体験を提供するために今年の3月から実証実験を行なっていて、ゴールデンウィークからはモニターによるテスト宿泊が開始されるようです。
水に浮く家というのは災害的な視点から見ても有用で、ロンドン在住の建築家であるCarl Turner氏は、家の底面をトレーのような形状にすることで洪水時に水上に浮く家を設計しており、ベトナムのH&P Achitectsという建築事務所も洪水の被害を受けない家という発想から竹でできたバンブーハウスを打ち出しています。
川のせせらぎや浜辺に打ち寄せる波の音が私たちの心を落ち着かせてくれるように、水の音に含まれる「1/fゆらぎ」という波形にはリラックス効果があるといいますし、水上で暮らすという選択ができるようになっていくことはとても自然なことではないでしょうか。
シェアハウスやミニマリズムといったように住空間への価値観が大きく変化しているこの時代に、自然と共に暮らす水上生活を志向する人が現れてもなんら不思議はありませんし、土地の不足している都市部では水上に浮かぶコワーキングスペースなどが今後登場するかもしれません。