Good Life Journal

日常生活における「疑問?」を「確信!」へ

桜にとって重要なのは満開に咲く5日間ではなく、残りの360日。

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「桜の樹の下には屍体(したい)が埋まっている!」、これは「檸檬」で文壇を沸かせてまもなく亡くなった小説家、梶井基次郎の「桜の木の下には」の始まりの一文で、あの花の色の美しさは、地面の下で桜の根が蛸のように死体を抱え込んで体液を吸っているからなのだと言うのです。

彼の生まれた明治時代は、新しい桜の品種「ソメイヨシノ」が急速に日本各地に広まったころで、私たちが毎年、九州から北海道まで桜前線が日に日に北上する様子をみられるのは、この全国の桜がいわばクローンであり、まったく同じ性質をもっていることによります。

ソメイヨシノは、山にある野生の桜の半分の時間で育つ上に、接木によってまったく同じ木を次から次へと増やせるのだそうで、水上勉の小説「櫻守」では、山桜が絹だとするとソメイヨシノは化繊のようなもの、「足袋会社の足袋みたいなもので、苗木の寸法、数量をいえば、立ちどころに手に入る品だ」と表現されています。

この大量に生産されてしまったソメイヨシノが一斉に咲いていることが美しいというのは先入観なのかもしれず、実在の櫻守として全国の桜とともに生きてきた佐野藤右衛門氏は、次のように語りました。

「桜をみるんやったら、自分が好きな桜を1本だけ決めて、春だけやなく、夏の桜、秋の桜、冬の桜と1年とおしてみていってほしいんです。そうすることで、人も自然を感じる事ができる。きっと桜もよろこぶと思いますわ。」

ソメイヨシノの開花は、第二次世界大戦のころと比べると1週間ほど早くなっており、それは地球の温暖化と、熱を閉じ込めてしまう都市化の影響を受けているためなのだそうで、22世紀には冬の寒さによる刺激を受けられなくなり、花をうまく咲かせることができなくなるとも考えられています。

そうなったとき私たちの国はひとつの誇りを捨てることになるのですから、ただ飲み会の口実として1年に1回近づくのではなくて、桜がなぜ美しいのか、1本の桜を1年間眺めて答えを探してみてはいかがでしょうか。

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