(出典:共同通信)
日産自動車の元会長カルロス・ゴーン容疑者が逮捕されて以来、次から次へと新たな疑問が取り上げられています。
パリやアムステルダムの豪邸や、ベルサイユ宮殿での結婚式などの豪華ぶりに世の中の注目が集まっているようですが、気になってしょうがないのは「黒幕」として逮捕された「もう一人の男」。ゴーン容疑者の「信頼できるパートナーの友」は、果たしてどんな人物なんでしょうか?
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「共謀者」はアメリカで牧場を経営!?
カルロス・ゴーン容疑者が役員報酬、約50億円を有価証券報告書に記載していなかったとして逮捕された事件で、前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者が、隠ぺいを指揮していたと報じられている。
Nissan said Kelly has been determined to be the mastermind of this matter.(日産は、ケリーが今回の事件の黒幕だったと公表した)mastermind:(名詞)立案者、黒幕、首謀者
ケリー容疑者は、「経理部門も見抜けない『構造』をつくっていた」「日産従業員ですらお顔を知らない」「アメリカで牧場を経営している」といった情報が飛び交っていますが、ケリー容疑者に関係する情報はほとんど見られなくて、アメリカの自動車業界紙が「Who is Greg Kelly?」(グレッグ・ケリーって誰?)と報道した位でした。
世界中に名前が知られているゴーン容疑者と比べて、「もう一人の男」といった地味な位置付けで報じられることの多いケリー容疑者。日産の公式サイトによれば、アメリカのオーガスターナ大学を卒業後、ロヨラ大学で法務博士号を取得。1988年に北米日産に入社後は、30年近く「日産ひとすじ」で勤めてきたそうです。
「世界の日産」の社長ですから、MBA保持者で、高い給与を求めて数社を渡り歩く「プロ経営者」の姿を勝手に想像していましたが、キャリアを見る限りは世界を揺るがす事件の「黒幕」にしては堅実な感じがします。
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控えめで注目されない「潜入スパイ」
それにしても、ケリー容疑者の情報をサーチすればするほど、あまりの「無名ぶり」に謎が深まるばっか。どんな人物なのかとイメージがふくらんでいたところ、米経済紙ウオール・ストリート・ジャーナルで気になる記事を目にしました。元同僚から「ケリー容疑者の素顔」を聞き出した記事ですが、タイトルからしてセンセーショナルです。
Ghosn's 'Inside Man,' Now Jailed in Japan, Quietly Wielded Power at Nissan(現在日本で拘禁されている「ゴーンの潜入スパイ」は、日産社内で人知れず権力を行使していた)Inside Man:潜入スパイwielded power:権力を行使する、刀をふるう
記事によると、 2012年に日本の自動車メーカーで初のアメリカ人取締役になったケリー容疑者は、「low-profile」(地味な、目立たない)な存在だったものの、ゴーン容疑者の「confidant」(腹心の友)として会社内で影響力がありました。
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会社内では「門番」としてよく知られている
一緒に仕事したことのある元役員は、ケリー容疑者のことをこう評価しています。
Mr. Kelly became well-known inside the company-most significantly in the last decade as gatekeeper and confidant to Mr. Ghosn.(ケリー容疑者はさしあたってこの10年間で、ゴーン容疑者の「門番」で「腹心の友」として、会社内でよく知られるようになった)well-known as~:~としてよく知られるdecade:10年間gatekeeper:門番confidant:腹心の友、親友
ケリー容疑者の人となりはクリアーになっていませんが、「Inside Man」(潜入スパイ)とか「gatekeeper」(門番)「confidant」(腹心の友)といったキーワードを見る限りでは、ともあれゴーン容疑者の側近としてのポストを固め、会社内で強い影響力があったことがうかがえます。
ニュースによると、「会社のために尽力してきた」と容疑を否認していますが、30年も務めた会社にロイヤルティーを感じることがなかったのか。あるいは、心から「会社のため」と思ってゴーン容疑者の「黒幕」に徹したのか。
ビジネスパーソンとして、ゴーン容疑者よりもケリー容疑者の「動機」のほうが、謎めいていて引っかかります。いずれ「映画」か「小説」になりそうですよね。