カンボジアの首都プノンペンでは2014年に町全体の地質情報や地盤情報を3次元化するプロジェクトが行われ、2017年には日本でも「i-Construction」という建設事業のハイテク化を目指した国土交通省の政策の一環で、東京都の3次元地盤モデルが作成されました。
今、建設業界では巨額の資本投入を行っているプロジェクトの施工期間は平均で20%長くなっており、プロジェクトの80%は当初の予算を越えるといいますが、その原因の1つは地質に想定外の特徴があることで、最悪の場合には、すべての計画を一から見直さなければなりません。
そのため、地形調査や地盤調査、地質のサンプリング、その他の物理探査などを行うことで知り得た情報は、それを全部合わせて総合的に把握する必要があり、地質調査や物理探査で得られた1つ1つのデータを統合して3次元化すれば、苦労して膨大なデータを読みとかずとも一目瞭然で地質を把握することができます。
(出典:geolab.jp)
Google Earthから地盤データを取得して3D地盤モデルを作成する技術があるように、3次元地盤モデルの作成には、磁力計や地雷探知レーダー、ドローンによる航空写真などを組み合わせて活用するなど様々な手法が開発されており、複数の情報を重ね合わせることで、従来の技術よりもはるかに速く高品質な3D画像を作ることができるようになっています。
建築会社の熊谷組は、鹿児島県発注の北薩トンネル(仮称)を掘削するにあたり、トンネルの調査・施工段階のデータを組み合わせてトンネル周囲の地質の透水性を3次元モデル化していて、地下水がトンネル内に流れ込まないようにするために行う薬剤投下の利き具合を可視化させました。
Between the Polesというコンサルティングファームの代表を務めるジョフ・ゼイス氏は地盤の3次元モデルを作ることで、建設工期を10週間短縮し、コストを10~15%節約できるといっていますが、3次元地盤モデルを作ることはそういった生産性の向上に加えて、工事が終わった後の維持管理や災害などの問題発生時に参照するための資料としての活用も期待されています。
(出典:geolab.jp)
地上の建造物だけでなく、普段は目に見えない地面の下を3次元モデル化して見えるようにすることで、建設に秘められている可能性もぐっと現実化しているように思われます。

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