Good Life Journal

日常生活における「疑問?」を「確信!」へ

「古き良き」を愛する。46年経過しても根強い人気の「中銀カプセルタワービル」を知っていますか。

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建築家の黒川紀章さんが設計したことで有名な銀座の中銀カプセルタワービルをご存知ですか?

1部屋1部屋がカプセル型をしているのが特徴的なこのビルは竣工から46年も経過していますが、最近ミュージックビデオ等の撮影に使用されたこともあり再び注目を集めているのです。

全部で140あるカプセルのうち、25は居住用として、40は楽器の演奏をしたりフィギュアのコレクションを保管するセカンドハウスとして借りられているといいます。インテリアや建築関連職、デザイナー職の人を中心に、事務所や仕事場としての利用にも人気があるそうです。

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大変ユニークな外観から興味をそそられるこのビルですが、とても不便なことが多々あります。

実は、円形の窓は開けることができません。そして、カプセルには断熱材も使われていないのです。そのためカプセルの中は夏は蒸し風呂のように暑く、冬は外気温と変わらないほど寒いのだそう。エアコンを設置しようにも室外機を取り付ける場所が十分に確保できない都合上、なんとか設置すると10〜15万円もかかってしまうのだそうです。

それだけにとどまりません。ビル内の配管が破裂してしまっているため、ユニットバスがあるものの給湯を行うことはできません。住人は1階まで降りて共用シャワーを使うか、自前で給湯器を設置するしかないのです。中には電気湯沸かし棒を使って、夏は2時間、冬は4時間かけて入浴用のお湯を沸かす猛者もいるといいます。

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それでもここで暮らす人々がいます。彼らはそれぞれ工夫してその不便さを楽しんでおり、新しい入居者の歓迎会や住人間での洗濯機の貸し借りなど、このビルの中では日本の長屋的なコミュニケーションが今でも行われているそうです。

カプセルの”活かし方”も住人により千差万別です。

例えば一般的には人気が低い低層階にあたるカプセルの住人は、自分で作ったベンチに座ってビールを飲みながら、窓の外を走る高速道路を眺めるのを最高の楽しみとしています。またカプセルの狭さを茶室に見立て、居心地の良い和の空間にアレンジした住人もいます。

1つのカプセルは6畳の間取りですが、ユニットバスを除いた生活スペースは4畳半ほどになり、収納スペースも限られてしまいます。しかし、荷物の3分の2を捨ててこのビルへやって来るというミニマリストな住人たちにとっては、ヨットのキャビンくらいの小さな棚でちょうどいいのだと言います。

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このビルを出入りするのは居住者だけではありません。

レゴで再現した中銀カプセルタワービルを実際のカプセル内で撮影する為だけに地方から訪ねてくる人や、このビルを見るためだけにわざわざ海外から日帰りで日本を訪れる人もいます。過去には、アメリカの映画監督であるフランシス・コッポラさんや俳優のキアヌ・リーブスさんまでも訪れたというのだから驚きです。

中銀カプセルタワービルの保存活動を行なっている前田さんによると、テレビや雑誌の取材でこのビルを訪れた人がそのまま惚れ込んで住人になるパターンが多いのだと語っていらっしゃいました。「実際にビルを見学してもらうことが、このビルの保存には一番良い」と前田さんは感じていらっしゃるのだそうです。

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「建物が老朽化してもカプセルを交換することで半永久的に存続させ続ける」という黒川さんのコンセプトが実現することはこの46年間ありませんでしたが、築50周年にあたる2022年に向け、現在カプセル交換を実施する計画が進んでいるそうです。

単純なカプセル交換だけではなく、カプセルを左右に2つ、あるいは上下もあわせて3つ4つとつなげることで、単身だけでなくファミリーでの利用もできるようにしようという案や、外したカプセルを平地に並べてカプセルビレッジを作ろうとする構想もあるようです。

変わらないものと、変わるもの――再三の取り壊し決議を乗り越えてきた中銀カプセルタワービルも、暮らしに対する価値観が変化してきた現代に合わせて、少しだけ形を変えようとしているのかもしれませんね。

中銀カプセルタワービル 銀座の白い箱舟 (NAKAGIN CAPSULE TOWER BUILDING)

中銀カプセルタワービル 銀座の白い箱舟 (NAKAGIN CAPSULE TOWER BUILDING)

  • 作者: 中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト,石川茂利,他
  • 出版社/メーカー: 青月社
  • 発売日: 2015/10/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
黒川紀章 都市デザインの思想と手法

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行動建築論―メタボリズムの美学

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