建築業界は最先端のテクノロジー導入が早い業界ではありません。しかし、VR(バーチャルリアリティ)を建築のプロセスに導入することによって、紙上のデザインと実際に建物が完成した時のギャップを大きく埋めることができることから、昨今新しいテクノロジーの導入が進んできている分野でもあります。
VRを使うことで建物を建てる前から”まるで実際にそこを訪れたかのような気分になれる”ことはもちろんのことですが、「夕方になったらどんな感じなのか?」、「春になったら、秋になったらどんな感じなのか?」、もしくは「週末にホームパーティーを開いたらどんな風になるのか」など、想定できる様々な場面を仮想体験することができます。
さらにVR上でドアを開け閉めしてみたり、天井の高さや光の入り具合をシミュレートしてみることで、建物が完成した後になって「こんなはずではなかった」といった事態を避けることができます。注文住宅やデザイン住宅を手がけるフリーダムアーキテクツデザイン株式会社が行ったアンケートによれば、45%の人が「平面図とCGだけでは空間をうまくイメージできない」と回答したのに対し、100%の人が「VRを使えばうまくイメージできる」と回答したのです。
2014年、VRビジネスの新鋭企業・オキュラス社を2230億円で買収したマーク・ザッカーバーグはVRについて次のように述べています。
「このテクノロジーが衝撃的なのは、あなたが他の誰かと一緒に別の場所にいるような体感を得られる点にあります。この感覚を経験した人は、いままでの人生の中で体感したことがないような出来事だったと言うんですよ。」
(出典:vimeo)
アンケートの話で先に挙げたフリーダムアーキテクツデザイン株式会社は、VRを最大限に活用し、建物価格1億円以上の富裕層に向けた家づくりプロジェクト「社長の邸宅」を開始しています。
そういえば、日本マイクロソフトの元代表取締役である成毛眞さんは自著の中で「家づくりこそ、最高の道楽だ」として次のように述べていました。
「私は家をつくるために、何度も建築士さんと話し合いをした。こういうプロセスは非常に楽しくて、自分もモノづくりをしている気分になれた。じつは家づくりこそ、最高の道楽なのだ。みなさんも、マイホームをつくるときはとことん楽しんでほしい。」
「一日を楽しみたいなら本を読みなさい。一年を楽しみたいなら種を蒔きなさい。一生を楽しみたいなら家を建てなさい」とは、とある静岡のローカルCMからの一節ですが、VRによる建築技術が進むことによって私たちの住まいはもっと理想に近く、楽しいものになっていくことでしょう。