(出典:日経ビジネスオンライン - 日経BP)
今となっては私達日本人のくらしに欠かせない存在となっているヤマト運輸の宅急便。流通の常識を覆し私たちのくらしを一変させた「クロネコヤマトの宅急便」は、1976年、ヤマト運輸代表であった小倉昌男氏が作り出した。その当時は、個人間の荷物は郵便局か国鉄が扱うことが当たり前であり、運送業者は企業等の大口貨物しか取り扱っていませんでした。
個人で荷物を発送するにしても、配送まで2~3日かかることが当たり前でした。国鉄にいたっては再三ストを引き起こし、このことから遅延することもざらだったと言います。指定した時間通りに、にこやかな従業員が確実に届けてくれるなど、イメージもつかない状況でした。
ヤマトグループは、今になっても優良企業の代表格として成長しています。小倉昌男というカリスマが去った後、後継者の社長たちがいかにして小倉氏の理念を継承し、現場に伝えていったのか。
本書ではグループの経営を担った5名が登場し、ひとりひとりの「小倉イズム」の実践と大奮闘劇が、真摯な言葉で書き綴られています。企業にとって、カリスマなき後が本当の正念場だったと思います。
後継争いやトップダウン経営のツケによって、せっかく積み重ねてきた企業の信頼が揺らぎ、苦悶してしまう例は尽きることがありません。ヤマトグループの場合は、正真正銘の実力者が「小倉イズム」を引継ぎ、グループをリードしてきた。
「実力者」たちは、いかに直面する危機を超越し、企業を成長させてきたのでしょうか。その軌跡をとくと読んでいただきたいと思います。経営の本質とは何かを考えさせられずにはいられない一冊だと思います。
- 「サービスが先決、利益は後から」が小倉イズムの本質であり、ヤマトグループの根幹理念である。
- 小倉さんは「鳥の目」で市場を俯瞰し、宅急便のプランを構想した。イノベーションを起こすのは社長の本当の仕事である。
- 現場の第一線で働くセールスドライバーこそがヤマトのファクターであり、お客様にとって良い従業員が高い評価を得る仕組が不可欠。
- 従業員一人一人が経営者の意識を持ち、自身でより良いサービスを考慮し実践することが企業の成長に発展する。