人口が今よりはるかに少ない3000万人程度と言われていた江戸時代。町のマネジメントは、その地域に住む人々によって行われていました。例えば道路を作る場合も、土を運ぶ人、水を運ぶ人、石を積む人など、住民がそれぞれの役割を分担し合って作業していたんです。
しかし現代では、多くの人が仕事に追われて多忙な日々を送っています。仕事と並行しながら町の管理ができるわけもなく、いつしか町の管理は行政が取り仕切るようになりました。次第に、職場と家を往復するだけの住民と町との結びつきは希薄化。今では、現代人にとって町はただの「家がある場所」でしかありません。
そんな中、各地域、特に地方都市では街づくりが盛んに行われるようになっていますね。「地方創生」という政策のもと、行政から支給される補助金をもとに街づくりを行う地域もあるようですが、集客方法や販促手法を改善しながら活気がなくなった商店街に再び人を呼び戻すなど、全国各地で街づくりに取り組む木下斉さんは、この補助金を「麻薬」と呼び批判しています。
というのも、補助金は地域経済の循環を促すために必要な「稼ぐ」ということをないがしろにしてしまうため、地域の自立心を奪ってしまうというのです。木下さんは街の活性化に従事する人の中には「地域のためになることをやりたい」と思うばかりに、お金を稼ぐことに後ろめたさを感じる人もいると苦言しています。
「今日の地域が抱える問題の多くは、住民の一時的な負担や国の予算によって解決できるものではありません。だからこそ、問題解決そのものを事業性のある取り組みにし、その黒字を将来につなぎ、自立継続できるように稼ぎの連鎖を生み出す必要があります。」―木下斉さん
日本の新築住宅着工件数は1995年には年間160万戸と言われていましたが、2015年には約半分の80万戸台にまで減少してしまいました。その一方で、空き家の数は約820万戸と言われています。
建築家で各地の街づくりに取り組んでいる嶋田洋平さんは、これからは「建物をつくる」という発想だけではなく、「すでにあるものをどう活かしていくか」ということも考えなければならないと提言。考えを切り替えれば、まだまだ面白い仕事が生まれる可能性があると期待を膨らませています。
長期的に持続可能な街づくりができるのは行政なんかではありません。「どうすれ地域はよみがえるのか」この問題は、不動産業界の手で解決していくべき問題なのかもしれません。