皆さんは、本や雑誌などを読んで「専門性を身につけろ!」という言葉をよく目にしませんか?確かに人材の競争が激しくなって、飛び抜けた専門性を持っていれば、職場でも有利で一目置かれる存在になれるかもしれませんね。
でも、地球温暖化の問題にしても、国際政治の問題にしても、その分野で「高度な専門性」を持った人たちが無数にいながら、問題の多くは解決されるどころか、どんどん大きく複雑になってきてしまっているのではないでしょうか。
「知性を磨く『スーパージェネラリスト』の時代」という本の中で、著者の田坂広志さんは個別の専門性で解決できる世の中の問題の多くは、20世紀にすでに解決されており、21世紀はそれぞれの専門性を統合して、答えを出すことができる「スーパージェネラリスト」の時代になると断言されています。
例えば、「私は営業なので、組織経営のことはよく分かりません」「私は人事の担当なので、CSR活動のことはよく分かりません」と言った声もよく聞こえてきます。
これは自分の長期的なゴールをしっかりと決め、いわゆる「山登り思考」で確実に自分の専門性を深めていくという少し前の時代では有効でしたが、数ヶ月前に立てた戦略がすぐに役に立たなくなってしまう今のような時代には、あまりよい考え方だとは思えません。
田坂さんは本の中で、「21世紀の戦略とはアートだ」だと述べ、世の中の変化が激し時代には、サーフィンのように刻々と変化する波にしっかりと自分の体制を合わせながら、確実に目的の方向へと向かっていく「波乗り思考」で、すべての物事を考えていかなければならないと仰っています。
しかし、何も営業の方がプログラミング言語やAIの専門的なことを理解したり、経理の方が営業力を身につけたりする必要はありません。そんなことは現実的に無理ですからね。
ただ、営業の方は常にお客様と接する中で、「こういったところをAIの技術に反映できないだろうか」、「なにかを探す時にこういった機能があったら、お客様はきっとラクになるのに」と言ったことなど、営業サイドからしか気づくことができない技術的な改善ポイントが必ずあるはずなのです。
そういった新しい気づきがあれば、どんどん共有して下さい。様々な「意見」や「考え」という絵の具が混ざった方が、アートは美しいものなのです。