景気低迷が深刻化し始めると、どの業界でも即戦力の人材が求められるようになります。最近、書店に足を運ぶと、「必ず結果が出る」、「1週間やれば、必ず変わる」などと言った、いわゆる即効性のある「技」だけを伝えるビジネス書が本当に多くなってきたように思いますね。
当たり前のことですが、松下幸之助さんや西郷隆盛が言うように、「心・技・体」の技だけ学んでも、心と体、つまり人間力がなければ、技の力は活かすことはできません。
私の経験から言うと、人間力を鍛える一番の方法は、古典や論語など偉大なる精神力をもった偉人たちが、次世代の人達のために書き残した書物に触れることです。
ビジネス書から得られるスキルと古典や論語を読んで血肉化する人間力は掛け算の関係にあります。
世の中に必要とされるビジネススキルは時代とともに変わっていくことでしょう。しかし、人が何を信じ、どんなことに心を揺れ動かされるといった、「人としての基本的なベース」は100年、200年、もしくは1000年以上経っても、それほど大きく変わることはないでしょう。
古典を読むことで、ようやく自分たちの目の前にある悩みや苦しみに、隠された本質を理解することができます。孔子が2500年前に言ったことが現代の環境に当てはまることに気づいた時、ようやく古典の凄さを理解することができるのです。人間の基本的な価値観は1000年以上変わらない。これは本当に凄いことですよね。
やはり、何百年、何千年と語り継がれてきているということは、これらの書籍が何らかの形で人々の役に立っているという証拠なのだと思います。
孫正義さんも織田信長、豊臣秀吉、そして徳川家康などの偉人を徹底的に研究して経営に活かしていると何かの本に書いておられました。
京セラの稲盛和夫さんは、西郷隆盛の「南洲翁遺訓」を愛読しています。松下幸之助さんは江戸時代の思想家、石田梅岩の「都鄙問答」を読み、彼のところに助けを求めてくる人たちには「梅岩を読みなはれ」と勧めていたそうです。
古典に即効性はありません。しかし、すぐ役に立つビジネス書というのは、裏を返せば「すぐ役に立たなくなる」ということもしっかり理解しておいて下さい。
何百年、何千年と時空を越えて受け継がれてきた言葉には、信じるに値する価値があるものです。つまり、「古いものが一番新しい」と、信じて、今日も一日頑張っていきましょう。